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メタバースとリアル<br>Case.3 JR東日本の取り組み<br>メタバースをもっと身近に──人と人とのつながりを演出するJR東日本のリアル×メタバース

メタバースとリアル
Case.3 JR東日本の取り組み
メタバースをもっと身近に──人と人とのつながりを演出するJR東日本のリアル×メタバース

2022年3月25日、JR東日本は株式会社ジェイアール東日本企画および株式会社HIKKYとともに「Virtual AKIBA World」をオープンした。JR東日本グループはなぜ、メタバースに参入するのか。その目的や思いを紹介する。

秋葉原駅と周辺エリアを再現したバーチャル秋葉原駅

 Virtual AKIBA World(以下VAW/バウ)は、「山手線31番目の駅」に位置付けられたバーチャル空間上の「秋葉原駅」だ。参加ユーザーは、世界的なコンテンツ集積地である秋葉原駅とその周辺エリアを再現した各場所(ホーム・車両、駅構内、駅前広場、中央通り・大通りなど)を、アバターを通して自由に回遊することができる。
 2021年夏、株式会社HIKKYが主催する「バーチャルマーケット6」に、JR東日本はバーチャル秋葉原駅を出展。数ある企業出展ブースの中で歴代最多の来場者数を記録した。これをきっかけに取り組みが本格化し、22年3月25日、正式にオープンするに至った。
 VRシステムにはHIKKYが提供する高機能なVRエンジンを採用したことにより、スマートフォンのブラウザからアクセスできるようになった。オープン直後の目玉企画として「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」とのコラボが開催され、期間中、駅を「シン・秋葉原駅」と命名。シン・シリーズのさまざまなキャラクターたちがVAWユーザーを迎え入れた。

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※こちらは開発中の画面です

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Ⓒ TTITk

「Virtual AKIBA World」では駅舎やホーム、列車など、秋葉原駅周辺をメタバース空間に再構築した。鉄道開業150年を記念して当時の1号機関車(ページ最上部)を再現したほか、会議などにも使えるオフ会ルーム(上)も用意。開業時は「シン・秋葉原駅」として、人気キャラクターとのコラボレーション(下)で盛り上げた

駅を「つながるくらしのプラットフォーム」へ

 JR東日本グループがメタバースに参入し、VAWプロジェクトを実施した背景には、同グループにおける「Beyond Stations 構想」がある。駅のあり方を変革し、通過する場所・集う場所という役割を超えて、駅を「"つながる"くらしのプラットフォーム」へ転換する構想だ。同社マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門新規事業ユニットの鴇澤(ときざわ)良次マネージャーは「本施策を通じ、新たな需要創出や価値創造を実現したい」と話す。

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鴇澤 良次マネージャー
マーケティング本部
くらしづくり・地方創生部門
新規事業ユニット

 「基本的なVAWの楽しみ方は、回遊エリア内でアバター同士がチャットをしたり、お気に入りスポットで一緒に記念撮影をしたり、あるいは一緒にオタ芸を披露したりすることです。そのほかにもいくつかの催しをご用意し、例えば日本中央競馬会主催のYAMANOTE競馬場では、実在の電車を競走馬に見立てたゲームで遊ぶことができ、またユーザー同士のコミュニケーションスペースであるオフ会ルームでは、ファン同士の交流を楽しむことができます」

リアル×メタバースで人同士のつながりを演出する

 人と人とのつながりを、リアルとメタバースの双方で"演出"していく──。鴇澤マネージャーはこれから向かうべきVAWの針路をそう語る。そのための仕掛けは既に始まっており、例えばVAWオープン時には、リアルのJR秋葉原駅の1階改札内エキナカスペースに「VAWゲートウェイ」と名付けられた"メタバースへの入口"が期間限定で設置された。ゲートウェイに掲示された二次元コードからVAWにアクセスできる仕様にしたところ、ゲートウェイ経由の1日のアクセス数が「多いときで数千アクセスに達した」という。
 また、鉄道開業150年記念との連動企画では、JR東日本パス(※1)を購入したお客さまがVAW内に点在する宝箱に隠されたキーワードに従って、指定スポットを写真撮影して応募。当選すると、パス購入金額相当のJREポイント(※2)がもらえるキャンペーンで、「期間中のVAW来訪者がいつもの倍以上を記録した」「キャンペーン申込者のうちの約3割が、同キャンペーンがパス購入のきっかけになった」そうだ。
 鴇澤マネージャーは「VAWはまだまだ未完成」と語る。一方で、これまでの取り組みで得られた知見は今後、JR東日本の「リアル×メタバース」を実践する上でヒントとなるのは間違いないだろう。

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駅ホームからは山手線車両に乗車することもでき、車内もメタバース空間上に再現されている

 「VAW空間内での広告出稿のみならず、リアルの交通広告メディア・駅空間と連動した展開を行うことが重要です。今後は技術的な課題などもクリアすることで、参入企業さまと共に、お客さまへこれまでにない新しい体験価値を提供できる可能性を秘めています。お客さまとのタッチポイントである"駅"を持つJR東日本グループだからこそ、メタバース・ステーションを通じて、メタバースをより身近な存在にしていけると考えています。リアル空間とバーチャル空間を融合させたビジネスを創造するためのアイデアをグループ内外から集め、それを実現していきたいです」
 駅というリアルなインフラを持つからこそできる、メタバースを掛け合わせた新たなサービス──今後、どのようなアイデアが具現化していくか、楽しみだ。

※1 期間限定(2022年10月14~27日)で、フリーエリア内のJR東日本全線や、東北・上越地方の一部第三セクター線などが3日間乗り降り自由となった特別企画乗車券

※2 SuicaやJRE POINTカード、ビューカードといったJR東日本グループのサービスを登録・連携していただくことで、さまざまな貯め方や使い方ができるグループ共通ポイント

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