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JR東日本テクノハートTESSEI<br>現場の力を原動力にさらなる高みへ

新幹線清掃前後のお辞儀には、JR東日本テクノハートTESSEIスタッフのおもてなしの姿勢が表れている

JR東日本テクノハートTESSEI
現場の力を原動力にさらなる高みへ

株式会社JR東日本テクノハートTESSEIは、JR東日本管内を走る新幹線車両の清掃業務を事業の柱とする会社だ。新幹線のお客さまに対する清掃業の枠を超えた「おもてなし」の姿勢が、国内外より注目を集め、評価されてきた。同社は今、さらなる発展に向けて、歩を進めようとしている。

清掃業からサービス業へと変化を遂げ注目を集める

 株式会社JR東日本テクノハートTESSEIは、東京駅と上野駅および田端、小山、那須塩原の車両基地において、JR東日本管内を走る新幹線の車両清掃業務を担っている会社だ。
 このうち東京駅での清掃は、駅に到着した新幹線の停車時間12分のうち、お客さまの乗降時間を除く実質7分間で全てを完了させることから、メディアなどで「7ミニッツミラクル」として取り上げられ、話題となった。また新幹線の入線時や清掃の終了後は、従業員がホームに並んで一礼。お客さまへのご案内も率先して行うなど、清掃業の枠を超えた「おもてなし」の姿勢が注目され、コロナ禍前までは、国内外からの視察が引きも切らなかった。
 同社が「清掃業からサービス業へ」を掲げ、改革を図っていったのは2006年からのことだ。三村亮介代表取締役社長は語る。
 「清掃業は決して華やかな仕事ではなく、従業員の気持ちも内向きになりがち。そこで『私たちの仕事は単なる清掃業ではないですよ』というメッセージを打ち出すことで、意識をお客さまのほうへと向けるとともに、自分の仕事に誇りを持ってほしいと考えました。お客さまに細かい心配りをすれば、お客さまからも温かい反応が返ってくるものです。それが従業員のモチベーションの向上につながっています」

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三村 亮介
株式会社JR東日本テクノハートTESSEI 代表取締役社長

 同社では従業員が働きやすい職場をつくるため、互いに認め合う文化の醸成にも力を入れている。その一つが、同僚の素晴らしい部分を伝え合う「エンジェルリポート」という取り組みだ。そこでは、どんなに些細なことでも良いと感じた行動をリポートする。自分を仲間が見てくれているという実感がモチベーションとなり、同時に相手を見習うことでサービスの向上にもつながっているという。
 この取り組みは従業員からの発案で、こうした提案を同社は積極的に取り入れている。例えば、東京駅や上野駅のトイレやベビー休憩室の飾り付けもそうだ。同社は車内清掃とともに、コンコースやトイレの清掃も担当しており、お客さまに楽しんでもらいたいとの思いからその提案がなされ、現在でも継続している。
 「当社が抱えているさまざまな課題や改善点についても、第一線で働いている従業員が最も把握しているはずです。そこで現場の声に耳を傾け、必要なものはスピーディーに具現化することを重視しています」(三村社長)

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2018年「第2回日本サービス大賞」において、「優れたサービスをつくりとどけるしくみ」が認められ、国土交通大臣賞を受賞した同社

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同社のサービスは高等学校の英語教科書(『LANDMARK Fit English Communication Ⅱ』新興出版社啓林館)に取り上げられている

「伝わる」ことを意識した中期経営構想を策定

 同社では20年秋、21~25年度にかけての中期経営構想「TESSEI 2025」(以下「2025」)を策定した。
 「『2025』についても、現場との距離が近い中堅社員を中心メンバーに据え、構想を練ってもらいました」(三村社長)
 経営企画部兼おもてなし創造部の浅海雅也副課長もそのメンバーの一人だった。浅海副課長は、構想の策定にあたって現場の従業員へのヒアリングを重ねたという。
 「そんな中で出てきたのは、『確かに当社の取り組みは、今まで好意的に受け入れていただいてきましたが、現状に甘え、新しい挑戦を怠っているのではないか』という声でした。また清掃業界においても、今後は人材の確保が難しくなる中で、少人数でも作業の質を保っていくための体制づくりも、課題として浮上してきました」(浅海副課長)

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経営企画部 兼 おもてなし創造部
浅海雅也副課長

 そこで「2025」では、成長目標として「効率的かつ効果的な作業の実現」と「新たなおもてなしの創造」を打ち出した。この経営構想の特徴は、目標を実現するために、個々人がどんな意識を持ち、何に取り組めばいいかが、分かりやすい表現でつづられていることだ。
 「どんなに立派な経営構想も、従業員に伝わらなければ、ただの絵に描いた餅になってしまいます。そこで現場の従業員に草案を何度も見てもらって文言を練り直し、『伝える』ではなく、『伝わる』内容になるように意識しました」(浅海副課長)
 もちろん浅海副課長は、「伝える」努力もしっかりと行っている。リーダー層を対象とした研修はもちろんのこと、新入社員研修にも積極的に参加し、「2025」に込めた思いを話している。
 「最近、現場の管理者との会話で"『2025』の実現に向けて、自ら行動する社員が出てきた"という話を聞きました。少しずつ手応えをつかみつつあります」(浅海副課長)

「2025」の考えを現場に浸透させるために

 東京駅で清掃業務を担う東京サービスセンターでも、「2025」を意識した取り組みに着手している。同センターで人材育成を担当している小島清次長は語る。
 「現在コロナの影響により、10〜12両からなる新幹線の清掃は、通常20人で行っています。これを『効率的かつ効果的な作業』の実現に向けて、もっと少ない人数でも行えるようにするためには、従業員一人一人の知識や技術の向上が不可欠となります」

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東京サービスセンター
小島清次長

 そこで同センターでは、パート、一般社員、準責任者、責任者の中からメンバーを選抜し、それぞれの階層ごとにチームを編成。各チームには講師役である指導課の管理者が加わり、チームごとに「2025」を実現するための、新たな視点による人材育成に取り組んでいる。
 「この取り組みはチャレンジアップ研修と名付けていますが、実際には研修というよりは、勉強会の要素が強いものです」(小島次長)
 また従業員から、少人数での作業を実現するためのアイデアを募り、発表会を開催。今年の元日には、その中から優れた案を実際に新幹線の車両を用いて試してみるといったことも行った。

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会社公認のマスコットキャラクター「ちりとり」は、イラストが得意なスタッフが考案した

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田端サービスセンター内の研修施設では新幹線の車内をモックアップとして再現。リアルな環境でサービス技術を学ぶ

 一方、新幹線車両基地で作業にあたる田端サービスセンターで、インストラクターを務めている三井秀樹副課長も、「2025」の現場への浸透に力を注いでいる。三井副課長が従業員に語り掛ける際に意識しているのは、「今あなたが取り組んでいるその作業は、『2025』のこの部分と関係がありますよ」というように、中期経営構想と日々の自分の業務を結び付けて考えてもらうようにすることだ。
 「職場巡回をしていると、従業員のほうから、業務改善のアイデアを出してくれることもあります。ある従業員は、作業をする際の動線の改善についての提案をしてくれました。田端サービスセンターでも1日に多くの車両を清掃するので、次の作業への移動時間を2分短縮するだけでも、大きな効果があります。こういった提案が現場からどんどん出てくるようになればうれしいですね」(三井副課長)

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田端サービスセンター
三井秀樹副課長

従業員が職場に溶け込める仕組みが充実している

 ではこうした会社の姿勢は、現場で働く従業員には、どう映っているのだろうか。パートとして20年に同社に入社し、21年から正社員となった上野サービスセンター勤務の浅香尚子さんは、「『エンジェルリポート』をはじめとして、働き始めたばかりの従業員が、すぐに職場に溶け込むための仕組みがとてもしっかりしている会社だと感じました」と話す。ちなみに上野サービスセンターは、上野駅に回送列車として入線してくる新幹線の清掃などを担っている。

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「エンジェルリポート」は職場の全員が閲覧可能。互いの良いところをほめ合うことが、個人のスキルアップにもつながっている

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上野サービスセンター
浅香尚子さん

 浅香さんが感心した仕組みの一つに、「クオリティコール」がある。これは清掃時に同僚から「座席の奥もしっかりと見てね。ゴミが落ちているよ」などと注意をされたときに、必ず「ありがとう」と返事をするという取り組みだ。
 「この取り組みがあることで、注意する側もしやすいし、された側も『ありがとう』と発することで、前向きな気持ちで注意を受け止めることができます」(浅香さん)
 一方、田端サービスセンターで働く柴田綾太さんは、7年間のパート勤務を経て21年から正社員に。現在、車内清掃の他、車両のボンネット部分の洗浄も担当している。
 柴田さんは21年、前出の三井副課長とともに、各サービスセンターから選出された社員より構成される「お客さまの声ワーキンググループ」に参加している。これはお客さまからのご意見やご要望に対し、真摯に向き合うためにできることは何かを考えるというものだ。

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田端サービスセンター
柴田綾太さん

 「他のサービスセンターの仕事について学べる貴重な機会となりました。例えば東京駅での清掃作業は7分以内に済ませなければならず、直接お客さまに関係する場所に重点を置いて清掃しています。駅ではできない部分をフォローするのが自分たちの役割であることに改めて気付かされました。各サービスセンターが一丸となり、より良い車内空間をお客さまに提供できればと思います」(柴田さん)

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田端サービスセンターでは、限られた時間で行う駅の清掃では難しい部分も、念入りに清掃している

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清掃の効率化を図るためにサーモグラフィを導入。座面部分の温度から、濡れ箇所を自動的に判定・表示する機能を開発した

 三村社長は「当社にとって22年度は、会社設立70周年、社名を鉄道整備株式会社から現社名に変更してから10周年にあたります。ぜひ飛躍の年にしたい」と語る。その飛躍の原動力となるのは、間違いなく現場の従業員たちだ。

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