JR東日本:and E

JR東日本が実践するESG経営<br>「持続可能な社会」のために何ができるのか(中編)

JR東日本では、路線周囲に所有する遊休地などを使い太陽光発電を整備するほか、風力発電などをグループ会社ともに積極的に展開している。
写真は富岡復興メガソーラー・SAKURA

JR東日本が実践するESG経営
「持続可能な社会」のために何ができるのか(中編)

「持続可能な社会」に向けて、企業が果たすべき責任は重い。JR東日本グループは、環境のためにどのような取り組みをしているのか。経営企画部の笠井浩司ユニットリーダーに話を聞いた。

輸送手段の中で環境優位性を持つ鉄道

 JR東日本は会社発足以来、中期経営ビジョンにおいて環境・エネルギーに関する取り組みを主要課題として掲げ、省エネルギー・地球温暖化防止を中心に各種施策を進めてきた。2016年には、パリ協定を受けた中期目標として、2030年度に13年度比で鉄道事業におけるCO2排出量40%削減を設定し、地球温暖化防止への取り組みを推進している。JR東日本グループの環境対策推進を担当する経営企画部の笠井浩司ユニットリーダーは、その取り組みを次のように説明する。「グループ経営ビジョンである『変革2027』では、SDGsを視野に入れ、『ESG経営』の実践により、事業を通して社会的な課題の解決に取り組み、地域社会の持続的な発展にコミットすることを打ち出しています。環境・エネルギーの観点では、脱炭素社会の実現を目指し、自社電力の約6割を賄う自営発電所と送電網を持っている特徴を踏まえ、エネルギーを『つくる〜送る・ためる〜使う』までのエネルギーネットワーク全てにおいて省エネに取り組んでいます。また、鉄道やまちづくりでの水素エネルギーの利活用や再生可能エネルギーの導入推進にも取り組んでいます」
 鉄道は他の輸送機関と比べエネルギー効率が高く、輸送量当たりのCO2排出量は自動車の7分の1、飛行機の5分の1と少ないが、JR東日本においてはそれぞれ12分の1、8分の1とさらに少ない。また、近年では技術の進歩で、環境性能に磨きがかかっている。 例えば、15年から山手線に導入されたE235系は、昭和時代の103系と比較して消費電力が43%に低減。また新幹線においても、北陸・上越新幹線として走るE7系は、東北・上越新幹線で活躍した200系と比べ、消費電力が59%と省エネルギー化を実現している。これらは車両の軽量化、モーターを制御するVVVFインバーターや、ブレーキ時にモーターを発電機として作用させる回生ブレーキといった技術によるもの。昨今では非電化区間を走る気動車の蓄電池車両への置き換えや燃料電池車両の開発にも取り組んでいる。

電車や駅のCO2排出量ゼロを目指す

 さらに、駅の省エネルギー化も進めており、2019年度までに「エコステモデル駅」として12駅を整備した。これは「省エネ」「創エネ」などの観点から環境技術を導入した駅で、風力発電設備の活用も含め電気のCO2フリー化を図った男鹿駅(秋田県)や自立型水素エネルギー供給システムを設置した武蔵溝ノ口駅(神奈川県)がある。今後はモデル駅に範をとった駅改良を進める予定だ。「多くのエネルギーを使う当社は、CO2排出量を削減する使命があります。挑戦を重ねることで、日本の鉄道全体を環境面で押し上げていければと考えています」

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男鹿駅の小形風力発電設備(左)と武蔵溝ノ口駅の自立型水素エネルギー供給システム(右)

男鹿駅の小形風力発電設備(上)と
武蔵溝ノ口駅の自立型水素エネルギー供給システム(下)

 JR東日本では、CO2排出量削減について高い目標を描いているが、その一つが2030年度に東北エリアの電車や駅で使う電気のCO2排出量をゼロにしようというものだ。グループ会社のJR東日本エネルギー開発が東北地方を中心に再生可能エネルギーの開発を推進、その発電電力の活用により実現を目指す。また、5月には、2030年度のCO2排出量削減目標を50%へ上方修正するとともに、2050年度のCO2排出量実質ゼロを目指す長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ 2050」も打ち出した。CO2フリー水素発電、CO2回収・貯蔵・カーボンリサイクル、車両の省エネ技術革新、燃料電池車両の開発等、エネルギーネットワークの全てのフェイズで新たな技術を積極的に導入し達成を目指す。「『達成手段が分かっている目標は目標とはいえない』と欧州のある国の首相は言います。目標達成は容易ではありませんが、全社員が意識を高め取り組むことで達成できるよう挑戦を続けていきます」

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エネルギーネットワーク(イメージ)

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笠井浩司
JR東日本 総合企画本部 経営企画部
地方創生・ESG経営推進ユニットリーダー

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