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世界に豊かなライフスタイルの提供を目指す<br>JR東日本の国際事業② 生活ソリューション事業<br>培ってきたネットワークを生かし、豊かなライフスタイルを提供する

2021年8月に台湾で開業した「ホテルメトロポリタン プレミア 台北」

世界に豊かなライフスタイルの提供を目指す
JR東日本の国際事業② 生活ソリューション事業
培ってきたネットワークを生かし、豊かなライフスタイルを提供する

JR東日本の国際事業は鉄道分野だけでなく、生活ソリューション事業にも及んでいる。なぜ、海外に展開するのか。その目的や意義とともに、実際に進出している事業の一部を紹介する。

国際事業を行う四つの意義

 国鉄時代には非運輸事業の分野、いわゆる生活ソリューション事業のビジネスはわずかで、補助的なものに過ぎなかった。だが、民営化後は着実に実績を伸ばしている。それはJR東日本の駅、あるいは駅周辺の不動産などのアセットの利用や、駅利用者や地方とつながり、幅広いネットワークを活用して人々の暮らしを変えていくことで成し遂げてきたことだ。
 「生活ソリューション事業の海外展開においても、培ってきたネットワークがカギになると考えています」と話すのは、マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門新規事業ユニット(海外事業)の衛藤淳一マネージャーだ。衛藤マネージャーによると、海外展開の意義は大きく四つあるという。

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衛藤淳一 マネージャー
JR東日本 マーケティング本部
くらしづくり・地方創生部門 新規事業ユニット(海外事業)

 一つ目は「お客さま」の視点。現地で暮らす人々の暮らしを豊かにする。海外で日本のコンテンツに触れたいなどの要望が高まっており、訪日旅行も拡大していることから、そのニーズに応えるためだ。
 二つ目は「地方への貢献」。JR東日本管内の地域食材・産品などの輸出や商業施設を通じた展開で、それらに触れる機会を増やす。そうしてインバウンドを誘客して地域の活性化を目指す。
 三つ目は「人材育成」。文化や言語、商習慣が異なる海外でゼロから事業を切り開く体験は、多様な価値観を理解する姿勢や、挑戦心を育むことにつながる。
 「その中でJR東日本グループの変革をリードする人材が育ってほしいとの願いがあります」
 最後は、もちろん「収益」。日本市場が人口減少などでシュリンクする中、経済成長が続くアジアを中心としたマーケットは魅力だ。JR東日本は事業ポートフォリオを、モビリティと生活ソリューションで「5対5」とすることを目指しているが、国際事業をその原動力の一つにしたいという狙いもある。

ホテル事業とフィットネス事業を展開

 海外展開において重視しているのが、イギリス、台湾、シンガポールを中心とした東南アジア、という三つのエリアだ。鉄道発祥の地・イギリスにおいては、ロンドン事務所を拠点に自販機ビジネスを展開。まずは駅ナカへの展開を行い、さらに駅ナカ商業施設への拡充を目指している。
 また、台湾では2018年にJR東日本台灣事業開發を設立。21年8月には「ホテルメトロポリタン プレミア 台北」を開業した。コロナ禍での開業で当初は苦戦したが、駅に近く、台北の中心エリアに立地し便利であること、また本格的な日本の懐石料理を楽しめるレストランや、日本水準の上質なサービスを受けられることから、現在は順調な推移を見せている。

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「ホテルメトロポリタン プレミア 台北」はデザイン性・機能性を兼ね備え、日本と台湾の文化やテイストを融合させたインテリア、きめ細やかなおもてなしなど、「プレミア」を冠するにふさわしいホテルだ

 「今後はより一層、東日本エリアの情報などを提供することで、日本の魅力を発信する拠点としても盛り上げていきたいと思います」と、同ホテルを運営する捷福旅館管理顧問股份有限公司の山本寛総支配人室長は話す。
 同ホテルの地下2階には23年8月に、JR東日本スポーツ台湾のフィットネスクラブ「ジェクサー・フィットネス&スパ南京復興」も開業している。日本式の充実した大型スパに加えて、床全面が岩盤のホットスタジオ、最新型トレーニングマシンなど、多種多様なエクササイズ空間を用意。フィットネスクラブの競争が激しい台湾でも人気を得ており、開業時の会員数は想定目標を上回る形でスタートが切れた。

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2023年8月に開業した「ジェクサー・フィットネス&スパ南京復興」は施設の充実はもちろん、安心して利用できるとの評価から、女性人気も高い

 「台北市政府産業発展局から、今後発展の可能性を有する企業に贈られる『潛力企業獎』をいただくことができました」と話すのは、運営する台灣捷爾東健身事業股份有限公司の大澤勇副総経理兼店長。今後も、お客さまの声に真摯に耳を傾け、サービスの改善・改良を重ねながらお客さまに末永く愛されるクラブを目指していくという。
 「その上で、台北都市圏を中心に複数店舗の出店ができるように全力を尽くします」(大澤副総経理)

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(左)大澤勇 副総経理 兼 店長
台灣捷爾東健身事業股份有限公司
(右)山本寛 総支配人室長
捷福旅館管理顧問股份有限公司

TOD事業への参画機会を探る

 シンガポールでは16年12月から、インバウンド創出のために食や日本文化などの情報発信拠点として「JAPAN RAIL CAFE」を展開。22年からは日本の鉄道や文化などの魅力を発信する「THE JAPAN RAIL FAIR」も実施し、23年は開催3日間で約1万3000人の来場者を集めた。

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(左上) 「JAPAN RAIL CAFE」の外観とスタッフの皆さん (右上) 2023年10月に開催された「THE JAPAN RAIL FAIR 2023」の模様 (左下) おにぎりが味わえる「JAPAN RAIL CAFE プレート」は人気メニューの一つ (右下) 日本文化が体感できるイベントを実施

 「カフェでは毎月テーマを設け、特別メニューや体験イベントを展開しています」と、運営するJR東日本東南アジア事業開発の阿部智成マネージャーは語る。イベントは月に1~2回、週末にかけて行われ、日本の自治体や日系企業との連携で実施されている。リピーターも多く、告知後2時間ほどで予約がいっぱいになってしまうほど人気がある。

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阿部智成 マネージャー
JR東日本東南アジア事業開発

 同じくシンガポールには19年8月に、コワーキングスペース「One&Co」も開設した。目的は、海外進出する日本企業や自治体、スタートアップやフリーランス、進出調査段階での出張者、日本進出を目指すシンガポール企業など、利用者間のコミュニティ形成だ。23年10月にはJETRO主催のイベント「SWITCH of JAPAN」の会場としてスタートアップ関係者約100名を集め、両国の架け橋として機能した。

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コワーキングスペース「One&Co」では、2023年10月にJETRO主催の「SWITCH of JAPAN」を開催。日本・シンガポールのスタートアップ関係者約100名が集った

 「シンガポールは東南アジアをつなぐハブですので、このエリアでビジネスを行っていく上での足がかりにできればと思います。そのため、JR東日本台灣事業開發設立と同じ年の18年に、JR東日本東南アジア事業開発を設立しています」と衛藤マネージャー。
 今後、アジアではTODという公共交通指向型の都市開発が進んでいくことが予想される。そうした事業に、JR東日本が培ってきた開発企画や動線設計に関わるノウハウを提供する。つまり、駅を中心としたまちづくりを通して、豊かなライフスタイルを現地に提供しようというわけだ。
 23年からはTOD事業への参画機会を探るために、タイとインドネシアにも社員を派遣している。
 「彼らの後方支援をJR東日本東南アジア事業開発が行うことで、東南アジア全域での事業参画機会を探ります」(衛藤マネージャー)
 TOD事業への参画は、海外における生活ソリューション事業の一つの到達点だという。実現のためには、国内で培ったネットワークと、現在築きつつある海外ネットワークをいかに生かせるかがポイントとなる。JR東日本のネットワーク力が、新たな事業で試されようとしている。

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