JR東日本:and E

世界に豊かなライフスタイルの提供を目指す<br>JR東日本の国際事業① モビリティ事業<br>現地の人々の暮らしに貢献し、JR東日本グループの人材の成長につなげたい

世界に豊かなライフスタイルの提供を目指す
JR東日本の国際事業① モビリティ事業
現地の人々の暮らしに貢献し、JR東日本グループの人材の成長につなげたい

JR東日本は、グループ経営ビジョン「変革2027」において、「世界を舞台に国際事業のビジネスモデルを確立し、アジアを中心により豊かなライフスタイルの提供を目指す」と掲げている。その領域は、JR東日本の持つ鉄道での経験や技術・ノウハウはもちろん、生活ソリューション事業にも及んでいる。では、JR東日本が国際事業を展開する意味や目的とは、どのようなものなのか。ここでは現状や今後の展望、またJR東日本グループも関わるインド初の高速鉄道プロジェクトの今を紹介する。

東南アジアを中心に複数のプロジェクトに参画

 JR東日本の国際事業は、鉄道を中心としたモビリティ事業と、生活ソリューション事業が両輪となる。主に前者を推進するのが国際事業本部で、ロサンゼルス・パリ・ロンドン・シンガポールに設置された四つの海外事務所と共に取り組んでいる。
 「海外鉄道プロジェクトへの参画や国際事業に関わる戦略の策定、国際交流の推進、日本の鉄道の国際規格化や標準化の取り組み、グローバル人材の育成、JR東日本グループの海外におけるブランド訴求、情報収集、リスクマネジメントなど、あらゆる活動をしています。私が所属する海外鉄道事業部門は、その中でもいわば実働部隊です」
 そう話すのは、国際事業本部海外鉄道事業部門海外鉄道事業ユニットの會田和彦マネージャーだ。同部門は、東南アジアを中心に都市鉄道に関連したプロジェクトを幾つも手掛けてきた。例えば、インドネシアへの中古車両の譲渡やメンテナンス技術支援などだ。
 また、タイ・バンコクの高架鉄道路線パープルラインは、2016年にJR東日本として鉄道車両や地上設備のメンテナンス事業に初めて参画した事例となる。

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會田和彦 マネージャー
JR東日本 国際事業本部
海外鉄道事業部門 海外鉄道事業ユニット

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タイ・バンコクのパープルライン車両基地(JTT)

 グループ会社である総合車両製作所が車両を新造して供給。JR東日本は丸紅、東芝とで現地にJTT(※1)を設立し、同社が鉄道車両、軌道、電力、車両基地設備のメンテナンスを請け負っている。
 「4名の社員がJTTに出向し、経営管理を行うほか、技術指導などを行いつつ、日本で培った効率的なメンテナンスをカスタマイズして実施しています」
 ほかにも、23年7月にはシンガポールを中心に東南アジアで軌道工事・保守事業を展開してきたGATES社の株式を取得した。今後は、タイで行っているビジネスに加え、設計・エンジニアリング、調達・設置(EPC)と、O&M(※2)が入ったパッケージ案件への参画も目指していく。

※1 正式名称は、Japan Transportation Technology(Thailand)Co.,Ltd.
※2 Operation & Maintenanceの略で、運行・維持管理のこと

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いかにメリットを定量的に示すかがカギ

 日本の鉄道技術に関する海外の評価は高い。とはいえ、それが採用されるかは別の問題である。會田マネージャーは、これまでパリ事務所やロンドン事務所に駐在し、海外展開の現場を見てきた。
 「マーケットによって鉄道に関する成熟度が違います。そのため、鉄道が既に出来上がっているヨーロッパでは、ビジネス展開としてのアピールは難しいのが実状です」
 では現在、インフラ整備が進む東南アジアではどうなのか。こちらは比較的アピールはしやすいが、現地の法令や文化、慣習などに適しているかが問題になるという。
 「いかに技術やソリューションが優れていても、相手側にどのようなメリットがあるか、できれば定量的に示すことが必要です。例えば、5Sやカイゼン活動は国際的に広まっていますが、それは日本的な考え方がそのまま認められたからというより、相手側がメリット・効果を理解したからだと思います」
 JR東日本の誇る安全・安心、定時運行などについても同様で、それらをいかに目に見える形で示せるかが、今後のカギとなる。
 「私たちの持つリソースをベースに、いかに海外の文化や慣習を理解していけるか。そして、現地の鉄道にとって親和性の高い提案をすることが必要となります」
 グローバルオペレーターとして各国プロジェクトへの参入実績が豊富なヨーロッパ企業や、台頭する中国企業などライバルも多い。そうした提案が、それらライバルとの差別化にもつながる。
 「鉄道は地域に根付いて、人々の生活に大きな影響を与えるものです。私たちの持つ技術やサービスによって、そこで暮らす方々の生活レベルが向上する。そんな貢献ができればいいと思っています」
 現地の実状にマッチした提案で、人々の生活に貢献する。その思いが、JR東日本が国際事業に挑戦する原動力となっている。

設計において約7万枚の図面を作成

 インド第2の都市であるムンバイから、北はグジャラート州のアーメダバードまで約500kmを結ぶインド初の高速鉄道プロジェクト。2015年12月の日印首脳会談時に、両国政府間で覚書が締結され、同路線に日本の新幹線システムが導入されることとなった。このインド高速鉄道プロジェクトでは、JR東日本グループが大きな役割を果たしている。その一つが日本コンサルタンツ(JIC)だ。
 「日本の鉄道インフラを海外に輸出しようという政府の方針の下、JR東日本をはじめ7社(※3)の事業者が出資して11年11月に設立された総合鉄道コンサルタント会社がJICになります」と話すのは、JICの美谷邦章取締役だ(※4)。美谷取締役は同社取締役インド高速鉄道推進本部副本部長として、同プロジェクトに携わってきた。

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美谷邦章 取締役
日本コンサルタンツ株式会社

 JICは、構想・事業性調査の段階から設計・入札、施工監理、運営維持段階までの業務を担う総合コンサルタント。インド高速鉄道では現在、日本工営、オリエンタルコンサルタンツグローバルとコンソーシアムを組成し、設計・入札支援や施工監理業務を実施している。そうした中、美谷取締役は、設計・入札支援を行うチームの総括を務めてきた。
 「日本人、インド人が一つのチームとなり、発注者であるインド高速鉄道公社(NHSRCL)と協議し、設計図や入札図書を作成していきます。日本方式を繰り返し説明し、納得いただきながら仕上げますが、日本では当たり前だと思っていたことも改めて調査したり、インドの法令や基準も考慮したり......学ぶことが多くありました」
 その過程で作成した設計図面は、約7万枚にも及んだという。

※3 現在は10社が出資
※4 役職は取材時。その後、2023年10月よりJR東日本 執行役員 国際事業本部 インド高速鉄道部門長に着任

専門外のことも都度、勉強する必要がある

 インドでは22年1月から軌道の工事が始まっているが、JICインド高速鉄道推進本部の久慈聡課長は22年12月に現地に赴任。北側の115㎞の軌道の施工監理を担当している。発注者であるNHSRCLや工事を請け負う協力会社との調整業務、工事計画などの文書レビュー、現場の工事進捗管理や品質・安全管理と業務の幅は広い。
 現地で最も苦労したのは、レター(説明)の多さだった。日本では相互信頼で工事が成り立つところがあり、細かいところは文書化されないことも多い。だが、海外案件では契約ありき。契約図書に書いていないことは、納得できるまでレターが出され、明確にしていく。着任後、15カ月間のレターの数は約800件。契約の専門家とも相談しつつ、一つひとつ回答しているという。
 「ほかにも、専門外のことをインドの方から質問されることがあるので、日本にいるとき以上に勉強しています」と久慈課長は笑う。

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久慈聡 課長
日本コンサルタンツ株式会社
インド高速鉄道推進本部

 現在は長さ5mのコンクリート盤を並べ、その上にレールを敷設する軌道工事が始まっている。だが、このコンクリート盤を製造する工場の開業が遅れた上、機械装置類の初期不良やコンクリート品質のばらつきなど、課題は多いという。そのため、昼夜を問わず、インド側の発注者や請負者と共に検討しながら改善策を探っている。
 それでも久慈課長は、「日本でも経験したことがない課題が多いですが、文化の違いを乗り越え、みんなで力を合わせてプロジェクトの完遂を目指すことは、何物にも代えがたい充実感があります」と前向きだ。

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インドで建設中の高架橋

教える側も刺激を受けるOJT研修

 現地におけるO&Mを実施できる人材の育成も始まっている。JR東日本では、インド高速鉄道部門内に人財育成・O&Mユニットを設置し、23年度はNHSRCLから派遣された実務責任者候補の8カ月間にわたるOJT研修(※5)を受け入れている。
 研修では座学のほか、新幹線総合指令所や各現業機関(駅、運輸区、車両センター、技術センター等)など関係各所で実際の業務を「見て」「体験する」ことで、運輸、車両、軌道、土木、電力、信号通信の各系統の仕事の進め方や専門知識、ノウハウの取得を目指す。
 同ユニットの竹山純平副長は信号通信系統、平野貴規副長は土木系統での研修に携わっているが、来日した研修生たちの真剣さや熱意に驚かされるという。

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竹山純平 副長(左)、平野貴規 副長(右)
JR東日本 国際事業本部 インド高速鉄道部門
人財育成・O&Mユニット

 「私自身、彼らに大きく感化されています。長く新幹線の信号の保守に関わってきましたが、彼らと話すことで毎回新たな気付きがあります。また、研修を受け入れている現場の皆さんも、高いモチベーションで対応してくださっており、相互に刺激を与え合っているようです」と話すのは竹山副長だ。平野副長もこう語る。
 「NHSRCLで使うマニュアル等のベースとなるものを、日本にいるうちにつくりたいと相談を受けています。彼らとの研修はただ座って聞いて終わりではなく、理解できるまで質問が続くので、教える側としてすごくやりがいを感じています」
 インド高速鉄道プロジェクトは単にビジネスとしてだけでなく、JR東日本グループにとっても得られるものがいろいろとあるようだ。
 「プロジェクトで感じたことや得られた気付きは、以降の業務でも生かすことができるはずです。その意味で、グループ全体として人材が成長するきっかけになっていると思います」(美谷取締役)
 インフラの建設・整備だけでなく、人々の成長をも促すインド高速鉄道プロジェクト。開業に向け、多くの関係者の奮闘は続く。

※5 JIC筆頭のコンソーシアムがNHSRCLより研修業務を受注、JR東日本はJICからの業務委託契約により研修を実施

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