中小の運送会社を支える中継拠点のシェアサービス

　2021年10月に創業した株式会社スペース（愛知県蒲郡市）は、「2024年問題」への対応に苦慮する中小の運送会社を支援するサービス「ドラ基地」の展開を図っている会社だ。
　「日本の運送会社の約93%は保有車両数が50台未満の小規模事業者、約7%が50～500台未満の中規模事業者です。中小事業者が24年以降も事業を継続できる仕組みを作らないと、日本の物流は成り立たなくなります」と同社の村井美映代表取締役CEOはそう語る。

株式会社スペースの村井美映代表取締役CEO

　「2024年問題」への対応策の一つに中継輸送がある。例えば東京・大阪間を1人のドライバーが往復するのではなく、東京と大阪から来たそれぞれのドライバーが、中間点の愛知で車両の交換なり荷物の積み替えなりを行った上でUターンすれば、ドライバーは日帰り運行が可能になり、長時間労働を抑えることができる。
　しかし多くの中小事業者は、中継拠点を持っていない。また中継拠点でのドライバーの交代要員もいない。そのため近年盛んになっているのが、中継拠点や交代要員の確保を目的としたM&Aだ。例えば、埼玉の事業者が愛知の事業者を買収するといったことが行われている。実は村井CEO自身も、かつては運送会社でM&Aを担当していた。
　「けれども、やがてM&A以外の方法はないのだろうかと考えるようになりました。M&Aでは億単位の資金が必要になります。たとえ成立しても、会社には大きな負担が発生します」
　そこで起業し、運送会社同士の敷地シェアサービス「ドラ基地」を展開することにした。これは運送会社に提供してもらった敷地を、ほかの運送会社が中継拠点として利用するというもの。敷地を提供する事業者が保有しているフォークリフトなども利用できる。
　このビジネスモデルが定着すれば、中小事業者は自前で中継拠点を持つ必要がなくなる。また、新たに交代要員を確保しなくても、例えばA社のドライバーは大阪から愛知まで、B社のドライバーは東京から愛知まで荷物を運び、中継拠点の愛知でお互いの荷物を積み替えた上でUターンするというように、他社との協業によるリレーで長距離輸送が可能となる。
　つまり「ドラ基地」は、事業者間の協業を促進するビジネスモデルともいえる。

「ドラ基地」のビジネスモデルは、第21回東三河ビジネスプランコンテストの一般事業部門で最優秀賞、デル女性起業家ビジネスコンテスト2023で1位に選ばれるなど、数々の賞を受賞して注目されている

中小運送事業者向けのマッチングサービスも展開

　同社では、22年4月に「ドラ基地β版」をリリース。現在、利用可能な中継拠点は東海地方を中心に全国22拠点（※）となっている。
　「まずは全国の物流量の約半数を占める関東・関西間の中継拠点の充実を重点的に進めつつ、全国展開も徐々に図っていきたいと考えています」
　さらに現在同社が注力しているのが、マッチングサービスの充実だ。「ドラ基地」は協業を促進する仕組みではあるが、現実には中小事業者が独力で協業先を見つけるのは容易ではない。
　「ある会社では、協業先を求めて40社程度に当たったところ、収穫はゼロだったそうです。荷物の量や種類、輸送の頻度、また、そもそも協業先として信頼できるかどうかといったさまざまな条件が合致しないと、マッチングは成立しません。そこで当社がマッチングの仲介を担うことにしました」
　具体的には、企業から問い合わせがあった場合に、その企業の過去の運行データと他社の運行データを照らし合わせ、さらには扱っている荷物の特性や企業風土などを加味した上で、協業候補先を紹介しているという。
　「現在『ドラ基地』でできるのは、中継拠点の予約だけですが、24年4月には、そこにマッチングサービスを付加したものをβ2版としてローンチする予定です。さらに24年10月には、完成版を出したいと考えています」
　同社は、まだ創業からわずか2年の小さな会社だが、日本の今後の物流のかたちを変えるかもしれない大きな構想を描いている。

※2023年8月現在