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物流「2024年問題」に立ち向かう<br>Case.1 時代に即した食品物流のプラットフォームの構築を目指して──F-LINE株式会社

物流「2024年問題」に立ち向かう
Case.1 時代に即した食品物流のプラットフォームの構築を目指して──F-LINE株式会社

さまざまな企業が、物流「2024年問題」を解決すべく取り組む中、大手食品メーカー5社が協働して物流課題の解決、さらには持続可能な食品物流体制の構築を進めている。その取り組みを取材した。

大手食品メーカーが共同で物流の効率化に着手

 「競争は商品で、物流は共同で」。
 2019年4月、この基本理念のもと、大手食品メーカー5社(味の素、カゴメ、日清オイリオグループ、日清製粉ウェルナ、ハウス食品グループ本社)の出資によるF-LINE株式会社(東京都中央区)が発足した。持続可能な食品物流体制の構築が、同社の目指していることだ。
 そもそもこれら大手食品メーカーが、物流課題の解決に共同で取り組むことになったのは、同社が誕生した4年前の15年にまでさかのぼる。
 加工食品業界では、13年末と消費増税前の駆け込み需要が急増した14年3月の2回、ドライバー不足が原因でトラックが手配できなくなる事態を経験した。これを契機に加工食品業界では、今後の物流体制の維持に対する危機感が高まっていった。そこで15年、後に物流会社設立に出資することになる前述の5社にMizkanを加えた6社によってスタートしたのが、F-LINEプロジェクトだった。
 「このプロジェクトでは、加工食品物流を巡る課題を各社で共有化した上で、物流の効率化に向けて、できることから取り組んでいこうということになりました」
 F-LINE株式会社物流未来研究所の平智章所長は、そう語る。
 その一つが、16年3月より味の素とMizkanとの間で開始した関東・関西間の共同鉄道往復輸送だった。これまで関東に工場がある味の素は関西へ、関西に工場があるMizkanは関東へと、片道で荷物を輸送していた。これをトラックから鉄道へのモーダルシフトを図った上で、同じコンテナを用いた共同幹線輸送へと転換したのである。
 また16年4月より北海道エリアで、19年2月からは九州エリアにおいて、配送拠点を集約した上で、一つの車両に複数のメーカーの商品を積載して得意先へと運ぶ共同配送も開始した。

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リードタイムの見直しが必要な時代が来る!?

 そして19年4月には、各社の物流機能を統合させた会社としてF-LINEが発足した。
 「ちょうど当社の設立は、働き方改革関連法が施行された時期と重なります。24年より自動車運転業務に関しても時間外労働の上限が規制されれば、ドライバーの確保はさらに大変になる。そこで当社は食品メーカー各社と協働で、第2期F-LINEプロジェクトをスタートさせ、現状の物流体制の抜本的な見直しに着手することにしました」(平所長)
 この第2期プロジェクトでは、中長距離輸送の効率化や、物流拠点から得意先への配送におけるリスクの抽出と対応策、電子化の推進による作業時間の短縮や簡素化などが検討されることになった。
 このうち工場から各地の物流拠点への中長距離輸送の効率化については、各社に詳細な輸送データを開示してもらった上で、共同混載等による効率化可能なルートを設計。またBCP(事業継続計画)の観点から、ルートの複線化も進めていった。その結果、16ルートのモデルが設計され、そのうち約半分については、既に稼働しているという。
 ちなみに長距離輸送については、同社では鉄道や船舶へのモーダルシフトを進めている。常温本部輸送企画部の浦澤真司部長は、「鉄道や船舶の活用については、まだ工夫の余地がある」と話す。
 「例えば関東・関西間の鉄道貨物輸送の場合、朝・昼・夕方出発の3便のうち、需要は夕方に集中します。従来のトラックによる輸送と同じリードタイムで荷物を運ぶことができるからです。しかしリードタイムを見直せば、朝や昼の便も有効に活用できます。鉄道による輸送量を増やすためには、従来のリードタイムにとらわれないことが大切になってきます」
 一方、物流拠点から得意先への配送におけるリスクの洗い出しを行った結果、浮かび上がってきたのも、「リードタイムの問題だった」と平所長は語る。
 「加工食品の場合、現状では注文を受けた翌日の配送になります。例えば、福岡の物流拠点から250㎞以上離れた鹿児島に配送する場合、拠点での作業は深夜や早朝になるため、作業員の確保が大きな課題です。今後は拠点から遠方の地域については、リードタイムを延ばしていただくことを荷主さまにお願いせざるを得なくなることも考えられます」
 さらに地方への配送については、人口減に伴い積載率が低い状態で荷物を運ばざるを得ないこともあり、配送コストの負担増も打ち手を講じるべき大きな課題となっている。
 このように同社では、24年以降も物流の動きを止めないために、食品物流を取り巻く課題を一つひとつ検証しながら、解決に取り組もうとしている。
 「私たちが目指しているのは、持続可能な物流体制の構築です。そのための一つの手段として、これからの時代に即した食品物流のプラットフォームの構築を進めていきます」(平所長)

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F-LINE株式会社 物流未来研究所の平智章所長(右)と常温本部輸送企画部の浦澤真司部長(左)

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