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JR東日本サービスクリエーション<br>お客さまに共感し、自ら考え行動できる人財を創出する

移動の疲れをアテンダントの笑顔が癒やしてくれる

JR東日本サービスクリエーション
お客さまに共感し、自ら考え行動できる人財を創出する

2019年4月に設立され、同年7月より営業を開始した株式会社JR東日本サービスクリエーション。同社によるアテンダントサービスと、お客さまに対する想いを紹介する。

※掲載している各情報は、2023年6月時点のものです

共感力、考動力を磨くサービスコンテストを開催

 新幹線のグランクラスアテンダント、普通列車グリーン車のグリーンアテンダント、新幹線・特急列車や「のってたのしい列車」の車内サービスを提供する株式会社JR東日本サービスクリエーション。同社は2022年11月に「アテンダントサービスコンテスト(以下、ASC)」を初めて開催した。同社のサービスの根幹である「共感と考動」がより深く実践できているかを見る社内コンテストだ。
 ASCは、現場で遭遇するシーンを想定し、模擬課題をクリアするロールプレイング形式。経験年数ごとに分けた3グループに、総勢27名のアテンダントが参加し、サービススキルを競い合う。
 現行のコンテスト形式に至るまでには紆余曲折があった。同社は職場が広域に配置されていることもあり、自身の職場・職種だけでなく、多種多様なアテンダント業務を知ることができる場として、20年度からこの社内イベントを開始。社内の評判も上々だったという。
 「ですが、これまでのロールプレイングは『台本ありき』の傾向があり、催しとしては盛り上がるものの、ちょっと出来過ぎに感じたのが正直なところです」と話すのは、同社人財開発チームリーダーの熊谷博美さん。「もっとお客さまの心に寄り添うことで、さらにお客さまに近づける。そのようなサービスを自ら考え、発信していくアテンダントを目指してほしい」。そう考えた末、台本を一切なくし、その場のアドリブのみで模擬課題を乗り切る"ガチンコ"の大会としてASCを実施することにしたという。

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人財開発チーム チームリーダー
熊谷博美さん

課題は「特別な日の就活生」大会当日の対応とは?

 ASCでは事前に六つのテーマ(課題)を設定した。しかし参加者には、自身がどのテーマで出題されるのか、お客さま役が具体的にどのようなアクションを起こすのかは、本番当日まで伝えられない。加えてロールプレイングは、舞台上から審査員・役員・箇所長・ほかの出場者ら大勢の目の前で披露することになる。日頃の業務で衆目には慣れているとはいえ、参加者たちの緊張感は高まる一方であった。
 大会当日、「2年未満」グループで優秀賞を受賞した東京グリーンアテンダントセンター所属の近藤李香さんには「特別な日を迎える就活生」というお題が出された。
 「お客さま役から面接に合格するコツを尋ねられ『そう来たか!』と思いました(笑)。私はお客さま役の笑顔がとても印象的に感じたので『その素敵な笑顔を面接官にしっかりとお伝えできれば大丈夫ですよ』とお答えし、いつも携帯しているイラスト付きメモに応援メッセージを書いてお渡ししました。また、お客さまが緊張されていると感じましたので、車中もリラックスしていただけるよう日当たりのよい座席をご案内しました」

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アテンダントは、シーンに応じてイラスト付きメモにメッセージを添えてお客さまに渡している

 近藤さんを含む参加アテンダント27名は、本番で課せられる模擬課題を想定しながら、職場の仲間たちとともに繰り返しシミュレーションしていた。「経験年数5年以上」グループで優秀賞を受賞した上野グリーンアテンダントセンターの内田舞さんは、周囲への感謝の気持ちを次のように述べた。
 「職場でのロールプレイングを撮影した動画を仲間と見直しながらアドバイスをもらうなど、たくさんの協力をいただきました。チームワークで勝ち取った受賞です。これからは次年度以降のASC出場者を支援していきたいです」
 「2~5年未満」グループの優秀賞受賞者、盛岡列車営業支店の木村水優さんは、自らの受賞についてこのように話す。
 「私が受賞できたのも職場の皆さまのご協力のおかげです。普段はグランクラスに乗車していますが、今後はインバウンド需要も見込まれます。ASC出場を機に養ったサービススキルのさらなる向上に努めたいです」
 ASCは個々のアテンダントの技術やマインドを高めるだけでなく、職場の絆・連携をより強くする効果も発揮したようだ。

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ASCで優秀賞を受賞した3人。左から、東京グリーンアテンダントセンターの近藤李香さん、盛岡列車営業支店の木村水優さん、上野グリーンアテンダントセンターの内田舞さん

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新幹線のグランクラスでは、より上質なサービスが期待されている

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普通列車グリーン車の車内販売も復活。車中でのお買い物を楽しみにされるお客さまも多い

車内販売商品を自ら企画提案し、自ら売り抜く

 アテンダント業務には車内販売の提供も含まれるが、22年11月以降、これまで本社主導だった販売商品の選定において、各箇所による企画提案制度を採用した。
 「私たちアテンダントは、車中のお客さまから『こんな商品はないの?』と、たびたびご要望をいただきます」と語るのは、企画提案第1号に輝いた金沢列車営業支店アテンダントの最上奈緒美さんだ。お客さまからのご要望は売れ筋商品のヒント。なんとか活かす方法はないかと、最上さんたちはかねてから考えていた。
 「そこに今回の企画提案制度ができたんです。私たちは、所属する金沢エリアの魅力ある商品を熟知しています。お客さまから得たヒントをもとに、私たちの売りたい商品について責任をもって販売できるチャンスと考え、皆で早速、応募しようと相談しました」
 提案した商品は、北陸新幹線開業を記念して開発された「グランアグリ(北陸地ビール)」と、県産品の能登牛を原料にした「能登牛ビーフジャーキー」。提案制度の開始を聞いたときから、所属する全アテンダントが「これしかない!」と思ったものだ。
 「アテンダント13名の商品に対する思いが綴られたアンケートが集められたのですが、まさしく強烈なアピールでしたね(笑)」
 そう振り返るのは、金沢列車営業支店営業係の佐藤佑樹さんだ。それらアンケートは、同商品を支店として本社に提案するのを決断するのに十分な材料だった。

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金沢列車営業支店のアテンダントたちが工夫を凝らした商品POP(上)と企画提案制度で出した商品に対する思いが綴られたアンケート(下)

 その後、佐藤さんは最上さんたちと商品の魅力を精細にまとめ上げ、数値的な販売計画なども定め、商品企画書を作成。役員への提案に臨んだ。
 「プレゼンテーションはWEB会議だったのですが、画面には社長以下の経営陣がずらりと揃い、かなり緊張しました(笑)。でも1時間くらい私たちの話を聞いてくださり、商品の採用も即断。その場で決まりました」(最上さん)
 本社決裁ではあるが、商品の選定・提案、さらには商品POPの作成など、すべてアテンダントを中心とした金沢列車営業支店による自作だ。だからこそASCと同様、支店内でのチームの結束が強まった。商品販売を開始するとその効果が現れたのか、当初販売計画を大きく上回る販売実績を上げることができたという。
 「新幹線車内販売の人気商品といえば、ホットコーヒーとアイスクリームがまず思い浮かびますが、グランアグリと能登牛ビーフジャーキーはそれに次ぐくらいの人気商品。せっかく出張で金沢に来てもお仕事が忙しく、ご当地グルメを味わえなかったというお客さまもいらっしゃいます。二つ合わせて1000円くらいの手頃なお値段です。車内販売でお買い求めいただき、金沢出張の思い出にしていただきたいですね」(佐藤さん)

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金沢列車営業支店アテンダントの最上奈緒美さん(左)、営業係の佐藤佑樹さん(右)

接客ではなく「接遇」目指す研修プログラム事業の狙い

 JR東日本サービスクリエーションは、旧国鉄時代に食堂車を営業した日本食堂株式会社の流れを汲む株式会社日本レストランエンタプライズ(現・株式会社JR東日本クロスステーション)を母体としている。そのため長年の業務で培ったアテンダントの豊富な経験・知見と、それを生かした研修システムを強みとしている。
 同社はそれを「社会にも有益に役立てたい」と考え、中長期ビジョンの一つ「新たな価値創造」を念頭に、新規事業として「研修事業(マナー研修・ビジネスマナー研修等)」を開始した。
 「講師は皆、列車内のアテンダント経験者かつ指導者。経験の幅・深さは比類ないものと自負しています」と、研修事業を牽引する研修マネジメントチーム副部長の大野奈々絵さん。当初はJR東日本とそのグループ各社にのみ研修プログラムを提供していたが、最近はグループ外の企業から行政まで、お客さまも増えてきたという。
 研修の講師を務める籠原グリーンアテンダントセンター副長の髙栁樹夏さんはこう話した。
 「アテンダント業務はいつも笑顔でいればよい、というわけではありません。各シーン・ケースに応じた表情というものがあります。挨拶・身だしなみ・立ち居振る舞い・言葉遣い・表情を『接遇5原則』と呼んでいますが、私たちは座学・実技を通じ、単なる接客ではなく、相手が必要とすることを自ら考え、おもてなしの心を持ちながらお客さまと接する──そんな『接遇』をお伝えしています」

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研修マネジメントチーム副部長の大野奈々絵さん(右)と籠原グリーンアテンダントセンター副長の髙栁樹夏さん(左)

 研修事業という新たな枠組みができたことで「アテンダントとして研鑽を積むだけでなく、研修講師へのキャリアチェンジも選択肢となるようにしていきたい」と、大野さんは今後に期待する。

「共感と考動」を軸に感性・技量を磨き上げる

 「私たちの使命は『列車内サービスのプロ』、かつ『サービス提供のプロ』であることです」と語るのは、阿部真臣代表取締役社長だ。
 「私たちは、一人ひとりがサービス提供のプロを目指すにあたり、その活躍フィールドを列車内にとどめず、お客さまや社会とのあらゆる接点において、「その時」「その場所」「その瞬間」で最適なサービスを提供できるプロフェッショナルを目標に、その活動を通じ日本全体のサービスレベルの向上に貢献する存在になりたいと思っています」
 ASC・企画提案制度・研修事業の全てに通底しているのは、阿部社長が最も大事にしている言葉「共感と考動」だ。
 「最近ではコロナ禍が象徴的でしたが、お客さまのご要望は時代と共に一層変化していきます。その時々のお客さまの思いに共感し、自ら考えて行動する──これからもそんなアテンダントを創出していきたい」と阿部社長は熱く話す。
 さらなるサービス向上に向け、次々と新たな取り組みにチャレンジする同社。日本が誇る「おもてなし」文化を支える一社といえるだろう。

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阿部 真臣
代表取締役社長

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