鉄道インフラ維持管理の現在とこれから
常磐線利根川橋りょう
国土交通省によると、日本全国に約10万橋の鉄道の橋りょうがあり、それぞれを管轄する鉄道事業者が管理しているという。2015年に架け替えが完了したJR東日本の常磐線利根川橋りょうも、その一つだ。
橋りょうと橋りょうの間に新設する難度の高い架け替え
日本三大河川の一つである利根川。群馬県と新潟県にまたがる大水上山(おおみなかみやま)を源とするこの川には、いくつもの鉄道橋が架けられている。その一つが天王台駅(千葉県我孫子市)と取手駅(茨城県取手市)を結ぶ常磐線の利根川橋りょうだ。
この橋りょうの歴史は古く、1896(明治29)年に単線で開業し、1923(大正12)年には複線を開業。その後、1963(昭和38)年の河川改修により現在の位置に建設された。
その際、上り線桁を再利用し約90年間供用されたが老朽化が進み、下り線桁についても構造上の課題が多く補修・補強を繰り返し実施しており、使い続けることが安全面や維持管理の観点から難しくなった。そこで補修ではなく、架け替えることに決定。新しい橋りょうは、架け替えの対象となる橋りょうと、常磐線各駅停車で使用している橋りょうとの間に架設することとなった。
常磐線利根川橋りょう架け替え時の工事の様子。隣の橋りょうとの近さがわかる
綿密な下準備により架け替えを完遂
架け替える以上、以前の橋りょうよりもメンテナンスにかかる負担を減らす構造が求められる。また完成した後には古い橋りょうを撤去しなければならず、その時間と費用も併せて見積もる必要がある。さらに今回の架け替えでは、近接する橋りょうと橋りょうの間に架設するため、営業運転中の列車に影響を及ぼさない工法も必要とされた。
また忘れてはならないのは、線路の切り換え。列車の継続的な運行のためには、最短時間で完遂しなければならない。事前施行可能な作業を洗い出して実施すると共に、保守基地線での線路移動のリハーサルや、各作業班が線路立ち入りから退出するまでの流れを現地で全作業員に周知するなど、綿密な下準備が行われた。
新たな利根川橋りょうは、2009(平成21)年より工事に着手し、15年に完成。旧橋りょうも撤去され、新たな利根川の景色として親しまれている。