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新しい移動の概念 「MaaS」の現在<br>Case.1 JR東日本長野支社<br>観光型MaaS「旅する北信濃」で北信濃エリアの地域周遊を促進する

新しい移動の概念 「MaaS」の現在
Case.1 JR東日本長野支社
観光型MaaS「旅する北信濃」で北信濃エリアの地域周遊を促進する

JR東日本が展開する地域・観光型MaaS。長野支社長野営業統括センターが展開する「旅する北信濃」もその一つだ。普及に取り組む北信濃MaaSプロジェクトの星薫リーダーと小泉俊平さんに、同MaaSの開発経緯と展望を聞いた。

MaaSを活用して地域周遊を促進したい

 「スマホひとつで便利におトクに」
 そんなキャッチフレーズで展開される「旅する北信濃」は長野県北信濃エリア(長野市・小布施町・山ノ内町・野沢温泉村・飯山市・須坂市・高山村)で実施するJR東日本の観光型MaaSだ。
 使い方は至ってシンプル。スマホを使いWeb上からユーザー登録の上、観光施設・交通機関・飲食店舗を検索する。あとはエリア観光に必要な交通電子チケット(バス・電車)、観光電子チケット(観光施設)、エキトマチケット(飲食・物販・アクティビティ施設で利用できる1枚500円の電子チケット)を事前購入。使用できる施設でマイチケット画面からチケットを提示し、使用開始すればOKだ。スマホ1台で完結でき、旅行の道中、財布もガイドブックも必要としない。

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善光寺の御朱印の引き換え、観光施設への入場、ロープウェイやリフトへの乗車ができるお得な観光電子チケットのほか、地元グルメやレンタサイクルを楽しめるエキトマチケット、エリアを周遊できる交通電子チケットなど、「旅する北信濃」のサービス内容は多様だ

 事の発端は、7年に一度行われる「善光寺御開帳」であった。
 「その時期はいつも、長野駅に大勢のお客さまが詰めかけます。せっかく長野駅までいらしたのですから、他のエリアにも周遊していただきたい。もっとも、これは善光寺御開帳に限ったことではなく、かねてより抱えていた地域としての課題でもありました。そこで2022年4~6月の善光寺御開帳に先駆け、長野駅の有志が集まり、エリアを周遊いただくための最善策は何か、検討を始めたんです」と、JR東日本長野支社・北信濃MaaSプロジェクトの星薫リーダーは、「旅する北信濃」スタートのきっかけを語る。

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JR東日本 長野支社 長野営業統括センター 企画センター 地域共創ユニット 北信濃MaaSプロジェクトの星薫リーダー(右)と、同プロジェクトメンバーの小泉俊平さん

 当初は「MaaSありき」ではなかった。だが、奇しくもその時期、JR東日本本社のマーケティング本部が地域・観光型MaaSの拡大を図るフェーズに移行していた。
 「コロナ禍も重なり、地域事業者の皆さまが苦境に立たされている切実な状況を伺っていました。そのため、既に実績のある当社のMaaSを活用しない手はないと思いました」

駅社員をプレーヤーとした地域アライアンスの拡大

 まずはじめに関係自治体と丁寧な交渉を行って参画に合意してもらい、交通連携を行うアルピコ交通と長野電鉄等とも良好なスタートを切った。あと必要なのは、北信濃MaaSに"相乗り"してもらう地域事業者とのアライアンスである。同じくプロジェクトメンバーの1人である小泉俊平さんは次のように語る。
 「地域の事業者の皆さまを1軒1軒訪問して回りました。スマホ画面を提示するだけの仕組みなので、事業者に決済端末導入等の負担を強いることはありませんが、やはり新しい取り組みに対する抵抗感が少なからずあったと思います。しかも営業に来るのが支社の社員ではなく、長野駅の駅社員だったりして、最初は皆さま、戸惑ったのではないでしょうか」
 一人でも多くの事業者の参加を募り、また魅力付けの特典等を提供していただくため、説明やご相談に何度も訪問することもあった。
 利用者のみならず事業者側の利便性やメリットを丁寧に話すことに努めた結果、多くの事業者のご理解を得ることができた。
 志賀高原の横手山・渋峠(しぶとうげ)スキー場も、「旅する北信濃」に参加する事業者である。
 「長野営業統括センター所長より、志賀高原のグリーンシーズンの目玉施設として、標高2307mの横手山の上から360度の大パノラマを楽しめる『横手山満天ビューテラスを組み込みたい』とご提案いただきました」と、参加のきっかけを話すのは、スキー場の運営に関わる志賀パレスホテル常務取締役の高瀬敏行さん。

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高瀬敏行さん
志賀パレスホテル
常務取締役

 「キャッシュレスや割引利用は集客面でのメリットがあり、お客さまの利便性向上にもつながります。これまでは交通は交通、観光地は観光地と、集客に関して各々で取り組んできましたが、今後は北信濃観光の楽しみ方を長野営業統括センターが中心となって発信していただければ」と期待する。

インバウンド対応にも取り組んでいく

 北信濃観光の楽しみ方という点では、季節ごとに提供プログラムを変更するなど、新たな企画を準備中だという。
 「長野の良さは全シーズンに魅力的な観光コンテンツがそろっていること。徐々にご利用も増え、全国的な知名度が上がっていると実感しているところです。幸い、インバウンドの復調に伴い、外国人スキーヤーも増えてきました。今後はインバウンドも『旅する北信濃』のメインターゲットとして、取り組んでいきます」(星リーダー)
 地域に魅力的な観光地がそろい、快適に周遊もできるならば「長野」まで行ってみよう──。北信濃MaaSは全国、そして世界から人を呼び込む可能性を秘めている。

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