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カルチャーコラム<br>是友麻希さん<br>発酵食品の持つエンターテインメント性やストーリー性を伝えていきたい

是友麻希 これとも・まき
発酵ライフアドバイザー
発酵食文化研究家。発酵食品の魅力を伝えるべく一般社団法人発酵ライフ推進協会を設立。会員数は3,000人を超え、東京をはじめ、札幌、名古屋、浜松、富山、広島、沖縄の全国7拠点にて活動。ホテルや飲食店、地方自治体の料理や商品開発など、食に関する多方面で活躍中。

カルチャーコラム
是友麻希さん
発酵食品の持つエンターテインメント性やストーリー性を伝えていきたい

食材そのままよりも栄養価、旨味成分、保存性などがアップし健康にもよいとされる発酵食品。一般社団法人発酵ライフ推進協会代表理事で発酵食品をこよなく愛し、「『美味しくて、簡単で、楽しく、美しい』発酵食をもっと広めていきたい!」と話す是友麻希さんに、その奥深い魅力について伺いました。

発酵との出会いは保存食だった「なれずし」

 発酵食品との出会いのきっかけはお寿司です。魚大好き、食べること大好きだった私は、海と魚にかかわる日々を過ごしたくて新卒で入った企業を数年で辞め、寿司職人の修行に入りました。そしてお寿司のルーツが魚を発酵させて長持ちさせる「なれずし」という発酵食品だったことを知ったんです。
 もともと食の世界に飛び込んだのは、「食をエンターテインメントにしたい!」という強い思いがあったからです。中でも寿司は、お客さまの目の前で調理するなど、日本料理界の究極のエンターテインメントだとの思いがあったから。そのルーツが発酵食品であることに驚き、自分でいろいろ調べ始めたら、発酵と腐敗の違いが分かったり、日本の基本調味料「さしすせそ」の多くが発酵食品であることに気づいたり。ますますおもしろくなってきて発酵食品の奥深さにはまりました。
 発酵食品って微生物がつくってくれるので、ペットを育てるような感覚なんですね。生きているんです。そこにまた、ストーリー性やエンターテインメント性を感じて嬉しくなりました。こんなにもおもしろい食品があるということを、どうやってみんなに伝えればよいだろう。まずはご家庭で料理する方々に分かってほしい。そうした思いで、料理教室「Ristorante我が家」を開き、その後、一般社団法人発酵ライフ推進協会を立ち上げました。

時短に腸活 発酵食品の魅力

 発酵食品の魅力は数多くありますが、日々の料理に採り入れる最大のメリットは「時短」です。
 発酵食品は手間と時間がかかりそう......、そう思っている人も多いかもしれません。ところが、いつもの料理に、例えば3年醸造した発酵食品をちょっと入れるだけで、まるで3年もかけて煮込んだようなコクや旨味、深い味わいを引き出してくれます。発酵食品は、食材を上塗りするのではなく、下から底上げして、美味しくしてくれます。調味料として、その力を存分に発揮してくれるのです。
 また腸内環境を整える腸活に関しても発酵食品は優れた効果を発揮します。まず、菌体を食べることで腸が活性化します。発酵食品からは生きている菌が摂取できますが、実はその菌が体内で死んでしまっても、死骸は腸内細菌が生きていくためのエサとして役立ちます。昨今、除菌、殺菌と菌を忌避する傾向にありますが、菌も人間と同様多様性が重要で、腸内にさまざまな菌が棲みついていることが大切です。多種多様な菌を摂取することで、腸活だけでなく、免疫力や抵抗力のアップにも役立ちます。
 また、微生物が繁殖する過程でビタミンやアミノ酸などさまざまな栄養素を排出するため、発酵食品は栄養素の宝庫です。できれば濾(こ)していないものを選んで摂れば、こうした栄養素を余すところなく摂り入れることができます。ビタミンは代謝を促してくれますし、アミノ酸は免疫力アップなどに効果を発揮します。
 さらに腸を整えるためには「美味しく食べる」ことが大切です。「好きではないけど頑張って食べよう」「美味しくないけど健康のために」という気持ちで食べていては効果も半減です。脳腸相関といって、「第二の脳」といわれる腸と脳は密接な関係にあり、脳のストレスは腸に影響を与えます。美味しいと感じながら食べると腸の吸収率がアップするともいわれています。

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是友さんが育てている発酵食品。❶かりんの酢漬け ❷塩麹のらっきょう ❸白しょうゆ ❹発酵ラー油 ❺にんじん麹 ❻フルーツの酵素 ❼醤(ひしお) ❽バジル麹

ご家庭でも実現できる食のエンターテインメント

 ほかにも、保存性アップ、栄養価アップ、美味しさアップなど、発酵食品ならではの魅力はたくさんあります。発酵調味料は簡単につくれますが、ハードルが高いと感じる場合は、最初は市販のものを使うことからのスタートでもいいと思います。まずは続けることが大事です。発酵食品を使って時短ができて、しかも体によく美味しいものが食べられる。いいことずくめですよね。
 また発酵食品は、どんな食材とでも組み合わせることができます。私は魚が好きなので発酵食品と魚を掛け合わせることが多いですが、「発酵×イタリアン」「発酵×スイーツ」「発酵×パン」、何とでも掛け合わせることができ、そこには無限の可能性があります。発酵食品はそれ自体で完成するものではなく、何かと掛け合わせて完成するものだと、改めて感じます。
 いつもつくっている家庭料理に発酵食品を掛け合わせたら、ご家庭それぞれの「食のエンターテインメント!」というものができあがるに違いありません。お気に入りの発酵食品を見つけて、毎日の食卓に是非取り入れてみてください。

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