JR東日本:and E

メタバースとリアル<br>Case.2 パーソルマーケティング株式会社<br>メタバース空間で「働く」を当たり前に

メタバースとリアル
Case.2 パーソルマーケティング株式会社
メタバース空間で「働く」を当たり前に

人材派遣業大手・パーソルマーケティング株式会社は、2022年1月、メタバースデザイン事業部を設置。PwCコンサルティング合同会社との協業で、メタバース市場における人材サービス事業に参入した。人材サービス企業がメタバース市場に参入した理由を探る。

人材サービス企業が参入した二つの動機

 労働者派遣・人材紹介・求人広告などを展開する総合人材サービス大手・パーソルグループ。中でもパーソルマーケティング株式会社は、同グループの販売支援サービス・ストア支援サービス・人材サービス等を担っている。
 同社メタバースデザイン事業部部長の川内浩司さんによれば、既存の「人材サービス」には二つの課題が顕在化しているという。

Featured_71_01.jpg

川内 浩司さん
パーソルマーケティング株式会社
メタバースデザイン事業部
部長

 一つは「仕事紹介の偏り」。働く意思やスキルを持つ求職者に対し十分な量・種類の仕事を紹介できていない。もう一つは「多様化の差異」。コロナ禍で働く場所・時間のニーズは多様化したが、紹介できる仕事は相変わらず「週5フルタイム」が中心。需要と供給のバランスが崩れているのが実情だ。
 そこで同社が提案するのが「メタバース空間で働く」という新しい価値観である。2022年1月のメタバースデザイン事業部立ち上げ以降、メタバース上の「接客・販売」「案内・運営」「出店支援」「誘致支援」「アバタースタッフ育成支援」への参入に向け、具体的な市場拡大のシナリオを描いてきた。

Featured_71_02.jpg

 「言葉として認知が広まっているとはいえメタバースはまだ黎明期。人材市場で『本当にメタバースで働ける』ようになるとはまったく知られていません。そこで事業部発足からの半年間、期間限定イベントを通じて一般消費者の認知拡大に努めてきました。まずはメタバースへのアクセス数を増やし、その結果をお示しすることで参入企業を増やす。25年大阪・関西万博はバーチャル万博としても注目されていますが、ゆくゆくはメタバースで働く人の継続的ニーズを確立していきたいですね」

メタバース空間内に新しい就業機会をつくる

 同社が形成するメタバース事業は主に三つの領域に大別される。求職者向けトレーニングプログラムを受講したスタッフを派遣する「人材派遣」、求人企業の導入検討や運営を支援・提案する「コンサルティング」、そしてメタバース空間内でのワールド構築をサポートする「ワールドホルダー」だ。
 ワールドホルダー領域では米国発のメタバース「Virbela(バーベラ)」の日本公式販売代理店である株式会社ガイアリンクと包括連携協定を締結した。同社は公式特約販売店として同ソリューションを提供する。
 世界中で実績を持つバーベラは同時アクセス数が最大2500人。メタバース空間上のフロアタイプ毎にサブスクリプション契約を結ぶため、コスト面で企業にも導入障壁が低い。かつバーベラでは契約フロア内で職場や店舗を持つことができ「実際の商談やプレゼンテーション、商品の販売等もバーベラ上で行える」という。

Featured_71_03.jpg

同社が包括連携協定を締結した「Virbela(バーベラ)」に存在する「GAIA TOWN」

 「コロナ禍で仕事のオンライン化が進む一方、コミュニケーションの希薄化も指摘されています。例えば、バーベラではアバター同士がプライベートスペースに移って"内緒話"が可能ですが、全員が一堂に集まるオンライン会議ではそうした行動はとれません。オンライン移行で再び見直されているリアルの価値が、メタバースでは実現できるのです」

Featured_71_04.jpg

島の形で構成される「GAIA TOWN」は、自由に行きたい場所に移動することができる

「働けない」大勢の人材と企業をマッチングする

 少子高齢化に伴い、労働力人口は減少の一途をたどる。30年には「644万人の労働力が不足する」と推計(※)される日本にとって、喫緊に解決すべき課題である。
 他方、人材市場ではリタイア後も働きたい高齢者、在宅介護者、育児中の方、障がい者、副業・複業希望者、ジェンダーギャップから就業できない人たち等々、さまざまな事情から「働けない」大勢の人材がいる。だが、メタバース上での就業ならば通勤時間は必要ない。場所の制限も受けない。立って仕事ができないなど、何らかの身体的な事情がある場合も、就業への障壁は低くなる。
 「バーベラ上で行われる商談・販売は、現実の職場・店舗と変わりありません。そのため、求められる仕事のスキル全てをAIで代替するのも、おそらく難しいでしょう。ですが、せっかくの経験、スキル、そして働く意思を持つ人材が眠っているのが今の日本の現状です。そうした方々に『メタバースで働く』という新しい就業機会を提供する先陣を切りたいと思います」
 なお、同社はバーベラ以外にもさまざまプラットフォームに対応できるよう、アバターとして働くスタッフの教育カリキュラムを構築。一人でも多くの方がメタバースで働くことができるよう準備しているという。同社が挑戦する、メタバースを活用した新たな就業機会の創出に期待が高まる。

※ パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」

Series & Columns連載・コラム

  • スペシャルeight=
  • JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!
  • SDGs×JR東日本グループSDGs×JR東日本グループ
    • 働く 集う 和む 空間の可能性働く 集う 和む 空間の可能性
    • カルチャーコラムカルチャーコラム
    • 地域発!世界を支える ものづくり地域発!世界を支える ものづくり
    • 東北に生きる東北に生きる
    • 働く 集う 和む 空間の可能性働く 集う 和む 空間の可能性
    • カルチャーコラムカルチャーコラム
    • 地域発!世界を支える ものづくり地域発!世界を支える ものづくり
    • 東北に生きる東北に生きる