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未来の「食の新常識」<br>Case.3 ホテルメトロポリタンさいたま新都心×さいたま市「チームEat All」<br> 食品ロスから転じたおいしい料理が目白押し

未来の「食の新常識」
Case.3 ホテルメトロポリタンさいたま新都心×さいたま市「チームEat All」
食品ロスから転じたおいしい料理が目白押し

本来は食べられるのに廃棄されてしまう「食品ロス」問題。ホテルメトロポリタンさいたま新都心では、その対策として余った食材を再調理することで、新たな人気メニューを生み出している。

余った食材から生まれたホテル自慢の大人気メニュー

 日本ホテル株式会社が運営するホテルメトロポリタンさいたま新都心では、和洋45品のメニューが並ぶ朝食ビュッフェが好評なサービスの一つ。中でも、地元・埼玉県産の「彩(さい)たまご」を使用した「シーズナルキッシュ」は大人気のメニューだ。実はこのキッシュ、余った食材を具材として活用しているという。
 「前日のビュッフェで余ってしまったソーセージやベーコン、温野菜、焼き魚などの品を、再加熱後に調味して具材に活用しています。お客さまからは『とてもおいしい』『良い取り組みですね』とご好評をいただいています」
 そう語るのは同ホテル、カフェ クロスヤードの榎本一貴料理長だ。2017年の開業以来、同ホテルでは食品ロスの削減に取り組んできた。20年には、さいたま市が推進する食品ロス削減プロジェクト「チームEat All」に参加。自治体との連携を図りながら取り組みを加速させている。プロジェクトに参加した経緯を、同ホテル運営管理グループの小林政志運営管理支配人は語る。

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榎本 一貴
ホテルメトロポリタンさいたま新都心
カフェ クロスヤード 料理長

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小林 政志
ホテルメトロポリタンさいたま新都心
運営管理グループ 運営管理支配人

 「食品ロス削減は以前から日本ホテル全体の大きな課題の一つで、経験豊富な榎本料理長をはじめ、厨房スタッフからさまざまなアイデアが出ていました。さいたま市としても人口が増え、可燃ごみの増加対策が地域の課題となっています。当ホテルは地域密着型という特徴もあり、食品ロス削減という観点でも地域に貢献できればと参加を決めました」

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人気メニューの「シーズナルキッシュ」。手前は焼き鮭とポロネギ、奥はジャガイモとソーセージを具材としている

地域密着型で食品ロス削減に取り組む

 SDGsに向けた世界的な取り組みが進む中、食品ロスの問題はCO2削減のための大きな課題だ。実際、廃棄時の焼却灰の埋め立てなど、食品ロスが環境に与える負荷は大きい。日本の食品ロスのうち、約半数が外食産業や製造・小売業等から出る「事業系食品ロス」と推計されている。
 「さいたま市では、ご家庭に加え、事業者さまにも食品ロス削減に取り組んでいただけるよう『チームEat All』を構成して推進しています。ホテルメトロポリタンさいたま新都心では、ドギーバッグ(※)を採り入れるなど、積極的かつ継続的に食品ロス削減に取り組んでおり、高い問題意識を感じたため、お声掛けしました」(さいたま市 環境局 資源循環推進部 資源循環政策課・波左間涼子主任)

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波左間 涼子
さいたま市 環境局
資源循環推進部 資源循環政策課 主任

 同ホテルでは、キッシュのほかにも上記のような活用をさまざま実践し、食品ロスの削減に取り組んでいる。
 「『おいしい』というのが大前提ですから、丁寧な調理をすることが欠かせません。同時に安全を担保する必要もありますので、加熱、あるいは冷却といった温度管理を着実かつ的確に行うことが重要です。もともと当ホテルのビュッフェは、できるだけつくりたてのものをお出しする方針で少量ずつ調理しますので、残る食材も少なく、再加工にそれほど手間がかからず済んでいます」(榎本料理長)
 野菜の端材を使ったオリジナルのドレッシングなど、若いスタッフからもアイデアが次々に上げられてくるという。これからは、食品ロスをどう削減するかという工夫も、料理人の重要なスキルの一つとなるのかもしれない。

※ 飲食店などで食べ残した料理を持ち帰るための容器

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左から、グリーンマスタードのフレンチドレッシング、ニンジンのドレッシング、トマトジュースを使ったイタリアンドレッシング。どれも野菜の端材や消費の遅い調味料やスパイスを利用して調理した逸品

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梅ひじき(上)、秩父産みそを使用した甘みそだれ(左下)、甘辛しょうゆ(右下)で味つけしたおにぎり。そのときに余っている食材次第で、調理法は変わる

食品ロス削減のための情報発信をしていきたい

 食品ロス削減のために考え出されたアイデアは、機会があれば多くの人に知ってもらいたい、というのが同ホテルで働く人たちの思いだ。
 「さいたま市には一人暮らしの方も多いので、そうした単身者の方、あるいはご家庭向けに、今後、食品ロスの出にくいレシピをご提案する機会があれば、と考えています。ホテルのメニューだけではなく、地域の皆さまと共に取り組んでいけるよう、さまざまな発信をしていきたいです」(小林支配人)
 さいたま市の波左間主任も「食品ロス削減のリーディングカンパニーとしてホテル業界をけん引してほしい」と、同ホテルに期待を寄せる。
 では、発信の一環として、榎本料理長に食品ロスの出にくいビュッフェの利用法をアドバイスしてもらおう。
 「何度も取りに行くのはご面倒かもしれませんが、こまめに召し上がっていただくことをお勧めします。温かいものが冷めてしまったり、冷たいものがぬるくなってしまうと食味も落ち、残しがちです。まずは洋食、次に和食など、カテゴリーごとにお取りいただくのが、おいしくロスを生まないコツです」
 料理は適切なタイミングで食す。これだけで食品ロスの削減につながるのならば、すぐにでも心掛けてみたい。

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