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SDGs×JR東日本グループ<br>水素ハイブリッド電車「HYBARI(ひばり)」<br>鉄道の脱炭素化、CO₂フリーに向けた試験車両

FV-E991系 HYBARI外観

SDGs×JR東日本グループ
水素ハイブリッド電車「HYBARI(ひばり)」
鉄道の脱炭素化、CO₂フリーに向けた試験車両

JR東日本グループは、グループ経営ビジョン「変革2027」のもとESG経営を実践し、事業を通じて社会的な課題を解決することで、地域社会の発展に貢献するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組んでいます。今回は、JR東日本が2022年3月に完成させた二酸化炭素を排出しない水素を燃料とする新しい試験車両「HYBARI」についてご紹介します。

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 JR東日本グループでは「ESG経営の実践」の一環として、将来にわたり、安定的かつクリーンなエネルギーを活用する「エネルギーの多様化」を目指しています。その中でも水素は、さまざまな原料や再生可能エネルギーを活用して製造することができ、エネルギーとして利用する際、二酸化炭素を排出しないという優れた特性があるため、水素エネルギーの活用を進めています。このたびJR東日本は、水素が燃料となる燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した、試験車両を開発・製造しました。
 その水素ハイブリッド電車は愛称「HYBARI」。「HY」には水素(HYdrogen)とともに、「HYB」にハイブリッド(HYBrid)の意味も込めており、HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovationの略です。
 春を告げる鳥であるひばりが大地に春の息吹を吹き込むように、HYBARIのデザインには、鉄道に新しいエネルギーを吹き込むイメージを取り入れました。燃料電池の化学反応から生まれる水を、碧いしぶきと大地を潤すイメージで車体の外観を表現し、スピード感と未来感を併せ持つ車両デザインとしました。

ハイブリッド駆動でよりクリーンな走行を実現

 HYBARIは2両編成です。1号車の床下には電力変換装置と主回路蓄電池を、2号車の屋根上には水素貯蔵ユニット、床下に水素の充填口や燃料電池装置を搭載しています。このHYBARIは、電車で世界初の70MPa(※)という高圧の水素を利用しており、これにより走行距離を延ばすことを可能にしています。

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HYBARIの機器配置

 駆動システムは、水素を燃料とする燃料電池装置と主回路蓄電池の2つのエネルギー源からなる「ハイブリッド方式」を採用。燃料電池装置では、水素貯蔵ユニットに蓄えられた水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電。またブレーキ時には、駆動用モーターを発電機として使用することで、車両の減速とともに生み出されるエネルギーを電力に変換し、ここで得た電力と燃料電池装置からの電力の両方を、主回路蓄電池に充電して利用しています。
 こうして燃料電池装置と主回路蓄電池の両方からの電力がモーターに供給されるハイブリッド駆動によって車両が動き、CO2を排出しない、よりクリーンな走行が可能となるのです。

※ メガパスカル。圧力の単位

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HYBARIの駆動のしくみ

目指すはCO2フリー水素利用のサプライチェーン構築

 HYBARIは2022年3月に完成し、南武線(川崎~登戸)、鶴見線および南武線尻手支線で実証試験を開始しており、今後も実証試験を重ね、水素ハイブリッド電車の営業運転を推進していきます。
 JR東日本グループは将来にわたり環境優位性を向上し、社会に新たな価値を創造する企業グループであり続けるため、50年度までにCO2排出量「実質ゼロ」をグループ全体の長期目標とする、「ゼロカーボン・チャレンジ2050」に取り組んでいます。今後は鉄道の脱炭素化、CO2フリー水素利活用拡大に向け、水素ハイブリッド電車の営業運転に向けた課題を解決していきます。
 多様なFC(燃料電池)モビリティ(バス、乗用車等)と連携し、他企業とも技術開発や実用環境の整備について連携しながら、CO2フリー水素の製造・輸送・利活用全体にわたるサプライチェーン構築をけん引することで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

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[ 報告者 ]
JR東日本 イノベーション戦略本部
R&Dユニット 水素社会実装PT
チーフ 村山 健/マネージャー 大道 修/成田 純

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