JR東日本:and E

ゼロカーボンに向けたエネルギー戦略<br>JR東日本グループの取り組み①<br>ゼロカーボンへの取り組みを通じてサステナブルな社会の実現を目指し、地域や社会の発展に貢献する

ゼロカーボンに向けたエネルギー戦略
JR東日本グループの取り組み①
ゼロカーボンへの取り組みを通じてサステナブルな社会の実現を目指し、地域や社会の発展に貢献する

鉄道事業においても、温室効果ガスへの対応は急務だ。鉄道事業は輸送量当たりのCO2排出量が自動車の7分の1、飛行機の5分の1とされ、他の輸送機関と比べると環境優位性は高いと言われているが、一方で多量のエネルギーを消費する事業でもある。2022年10月14日、日本の鉄道は開業から150年を迎えたが、将来にわたりその環境優位性を向上させていくために、この問題にどう対応していくのか。JR東日本グループにおいては、22年7月に「エネルギービジョン2027~つなぐ~」を策定。エネルギーを「つくる」「送る・ためる」「使う」の三つのフェーズに分け、それぞれのフェーズごとに具体的な施策を掲げ、取り組みを加速させている。今回は、「エネルギービジョン2027~つなぐ~」の概要、及び「つくる」のフェーズにおける取り組みを紹介する。

パリ協定の締結を契機に脱炭素化への取り組みを加速

 JR東日本がCO2削減に関する目標を初めて設定したのは、2016年度にさかのぼる。
 その前年、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」としたパリ協定が採択された。この協定は、歴史上初めて気候変動枠組条約に加盟する全ての国が温室効果ガス排出削減等に取り組むことに合意した画期的なものだった。
 これを受けてJR東日本も、鉄道事業におけるCO2排出量を30年度までに40%削減(13年度比)することを掲げた。
 続いて18年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)において、「気候変動影響を最低限に抑えるためには、気温上昇を1.5℃に留めるべきである」とする「1.5℃特別報告書」が受諾され、翌年のCOP25で各国の目標見直しが推奨されると、JR東日本もさらなる数値目標の引き上げを検討。20年5月、鉄道事業におけるCO2排出量を30年度までに50%削減し(13年度比)、50年度までに実質ゼロにすることを掲げた「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を公表する。さらに10月には、これをJR東日本単体ではなく、グループ全体の目標とした。そして22年7月には、「エネルギービジョン2027~つなぐ~」(以下、ビジョン)を策定。これはゼロカーボンの実現に向けて、JR東日本グループ内で既に着手もしくは開発中、検討中の諸施策をビジョンとしてまとめあげたものだ。

Featured_58_01.jpg

 このように16年度以降、CO2の排出量削減に積極的に取り組んできた背景について、エネルギー企画部戦略ユニットの安藤政人ユニットリーダーは次のように語る。
 「鉄道は他の輸送機関と比べ、輸送量当たりのCO2排出量が少なく、環境優位性の高い公共交通機関です。そこにさらに高い数値目標を自らに課し、磨き上げていくことで、鉄道の環境優位性をより高め、持続可能な社会の実現に貢献していきたい。またそれにより、鉄道が環境にやさしい乗り物であることを、多くの方に訴求したいという思いもあります。もちろん、鉄道事業以外の脱炭素化も推進していきます」

Featured_58_02.jpg

安藤政人
エネルギー企画部 戦略ユニットリーダー

東北エリアのゼロカーボンを再生可能エネルギーで実現

 ではJR東日本では、30年度までのCO2排出量50%減、50年度までの排出量実質ゼロを、どう実現していこうとしているのか。
 ビジョンでは、エネルギーを「つくる」「送る・ためる」「使う」の三つのフェーズに分け、それぞれのフェーズごとに具体的な施策を掲げている。このうちゼロカーボンを実現する上でより重要なカギを握るのは、エネルギーの上流に当たる「つくる」のフェーズだ。
 実はJR東日本は、電力会社から電力を購入する一方、神奈川県川崎市に火力発電所、新潟県の信濃川に水力発電所を有しており、使用電力の約6割をこの自営の火力・水力発電で賄っている。また近年は、グループ会社のJR東日本エネルギー開発株式会社が中心となり、太陽光発電・風力発電の拡大にも力を入れている。さらにバイオマス発電やバイオガス発電、地熱発電の開発にも着手。つまりJR東日本グループの場合、エネルギーを「つくる」フェーズにおいても、ゼロカーボンの実現に向けて、自社として主体的に取り組める余地がかなり大きくあるわけだ。
 「JR東日本グループでは、まず再生可能エネルギー電源の開発を推し進め、30年までに70万kW規模の開発を目指しています。これだけの発電量を確保できれば、東北エリアの鉄道事業において電力会社から購入している分の電力を、全てゼロカーボンに置き換えることができます。同時に省エネ等も推進することで、30年度までにCO2排出量を50%削減するという目標の達成を目指します」(安藤ユニットリーダー)
 さらに50年度までには、再生可能エネルギー電源の発電量を100万kW規模にまで伸ばすことで、東北エリアのみならず、電力会社からの購入電力分の全てをゼロカーボンに置き換えるという構想があるという。

CO2が出ない水素を活用した火力発電を検討

 一方、50年度までにCO2排出量実質ゼロを実現するためには、自営の川崎火力発電所の脱炭素化を推進していくことが不可避となる。JR東日本では「川崎発電所更新ワーキンググループ」を発足させ、水素を活用した発電技術の検討に着手している。ワーキンググループメンバーの一人である川崎発電所技術統括グループの吉野洸二主務は次のように語る。
 「現行の天然ガスや都市ガスの代わりに、水素を燃料にして発電所のタービンを回せる技術が確立できれば、火力発電所から排出されるCO2の量をゼロに抑えることが可能になります。まずは天然ガスなどと水素を混焼させて、低炭素で発電する技術を開発した上で、次に水素のみでの発電に挑戦していく、というステップになると思います」

Featured_58_04.jpg

吉野洸二
川崎発電所
技術統括グループ 主務

 ただし水素を用いた火力発電の研究開発は、まだ世界的にも歴史が浅く、混焼率をいかに上げていくかや、燃焼時に大量に必要となる水素の安定供給をどう図るかなど、実用化に向けた課題は山積しているという。JR東日本ではエネルギー関連の企業と連合を組み、これらの課題の解決に向き合おうとしている。
 また川崎発電所では、4基ある発電施設のうち新1号機は21年に運転を開始したばかりであり、今後数十年は稼働し一定量のCO2を排出し続けることになる。そのため排出されたCO2を分離・回収し、貯留または有効活用するCCUS(※)についても、今後導入を検討していく予定だ。
 「もし水素を用いた火力発電所が実現すれば、CO2フリーの電力を、再エネと違って天候に左右されずに安定的に供給することが可能になります。道のりは決して平坦ではありませんが、夢のある技術です」(吉野主務)

※ 発電所や工場などから排出されたCO2をほかの気体から分離・回収し、新たな商品やエネルギーに利用しようという技術

Featured_58_03.jpg

2021年に新たに運転を開始した川崎火力発電所の新1号機の建屋。天然ガスを燃料とし、最大出力21.26万kWを誇る

Featured_58_05.jpg

川崎火力発電所の新1号機。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた複合サイクル発電方式を採用し、二酸化炭素排出量を大幅に削減

Series & Columns連載・コラム

  • スペシャルeight=
  • JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!
  • SDGs×JR東日本グループSDGs×JR東日本グループ
  • スペシャルコンテンツスペシャルコンテンツ
  • JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!
  • SDGs×JR東日本グループSDGs×JR東日本グループ