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カルチャーコラム<br>野村ケンジさん<br>いい音やいい製品は人それぞれで違うものです

野村ケンジ のむら・けんじ
オーディオ・ビジュアル評論家
ポータブルオーディオやホームオーディオなどのAV機器をメインに、専門誌やモノ誌、Web媒体などで幅広く活躍。特にヘッドホン・イヤホンに関して造詣が深い。TBSテレビ開運音楽堂「ノムケンLab!」、レインボータウンFM「みケらじ!」などに出演中。

カルチャーコラム
野村ケンジさん
いい音やいい製品は人それぞれで違うものです

VGP(※1)のライフスタイル分科会などの審査員を務め、年間300以上の製品を10年以上にわたって試聴し続けるなど、ヘッドホン・イヤホン評論の第一人者である野村さん。スマートフォンで音楽を聴くのが当たり前になった今、ワイヤレスイヤホンの選び方、楽しみ方について伺いました。

※1 国内最大級を誇るオーディオ・ビジュアル機器の総合アワード

完全ワイヤレスイヤホンがシェアの半分超に

 1979年、ソニーが「ウォークマン(※2)」を発売したことで、音楽を野外に持ち出せるようになりました。いつでもどこでも自分の好きな音楽が楽しめるという究極のパーソナリティの実現は実に画期的でした。その後アップルが2001年に「iPod(※3)」を発表。現在スマートフォンで音楽を聴くことがメインとなっているのは、アップルが「iPod」を発展させる形で「iPhone(※3)」を生み出したからです。
 イヤホンも日進月歩の進化を遂げており、21年には完全ワイヤレスイヤホン(※4)がイヤホン全体のシェアの半分を超えました。
 ワイヤレスイヤホンがここまでシェアを伸ばしたのは、ケーブルレスなので扱いが手軽という点や、機種によってはノイズキャンセリング機能、外音取り込み機能を兼ね備えている点などが大きいでしょう。一方で、バッテリーが切れると充電できるまで使用できない、そもそもバッテリーの交換ができないため寿命が短いなどのデメリットもあります。有線はケーブルが邪魔だったり断線するなどの弱点はありますが、音質はワイヤレスに比べて圧倒的に勝っていますし、コストパフォーマンスの面でも優れています。これからも両者それぞれのメリットを生かせる場所で使用され続けていくと思います。

※2 ウォークマンは、ソニー株式会社の登録商標です
※3 iPod、iPhoneは、米国およびその他の国で登録されたApple Inc.の商標です
※4 左右のイヤホンをつなぐケーブルのないワイヤレスイヤホン

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左手前から時計まわりにTW-E5B(ヤマハ)、TE-D01gs(AVIOT)、AH-C830NCW(DENON)、TW-4000s(GLIDiC)、以上4点完全ワイヤレスイヤホン。右手前GO bar(iFi audio)のようなヘッドホンアンプをスマホに接続し、さらに有線イヤホンをつなぐことで音質の向上を図ることもできる

自分に合ったイヤホンで自由に音楽を楽しむ

 ワイヤレスイヤホンを選ぶポイントはいくつかあります。
 まずは、何より自分の好きな音の製品を選ぶことです。聞いていて心地いい、楽しいと思える音が自分にとってのいい音ですが、それは自分の好みと、どんな音を聞いてきたかという音の履歴に左右されます。ですから他の人にとってのいい音が自分にとっていい音とは限りません。
 とはいえ、土台となる正しい音のポイントはあります。SN比(※5)が高い(ノイズが少ない)こととひずみが少ないこと、この2つが正しい音の基本条件です。ノイズやひずみの多い音は生理的に嫌な感じを受けるので分かると思います。また、好みの音楽によっても相性は変わってくるので、イヤホンと音楽と自分、三者の相性がぴったり合うものを選びましょう。
 次に装着感です。ネットで購入する人も多いと思いますが、できれば購入前に自分の耳にフィットするかどうか試したいもの。フィットしていないと外音が入ってくるため音量を大きくしてしまいがちですし、落とす危険性も増します。イヤホン専門店などで試着できますので、ぜひ自分の耳の形に合ったものを選んでください。イヤーチップもぴったりのサイズに調整しましょう。自分のスマホにつないで試し聴きもできるので、ぜひショップに足を運んでみてください。
 3つ目が、外音取り込み機能です。ノイズキャンセリング機能ばかりが注目されますが、特に屋外で利用する場合、外音取り込み機能は必須です。耳からの情報がシャットアウトされると接近する車に気付かないなどの危険もあり、自然な外音取り込み機能の付いたものを選びましょう。
 4つ目は対応コーデック(※6)。基本コーデックであるSBCでは、データ量の少なさから音質的に不利な点があります。最低限でもAAC、できれば高音質なLDACやaptX Adaptive に対応したイヤホンを選んでください。
 最後に、ワイヤレスイヤホンは毎年急激に進化していますので、自分の経済状況と照らし合わせて、少なくとも2年に1度は買い換えられる価格帯のものをお勧めします。ただし、5000円以下のものは性能に過度な期待は禁物です。
 なお、外でイヤホンを使用するときにはマナーも大切です。自転車乗車時や歩行時には音楽をオフにし、外音取り込み機能をオンにする、あるいは外すときに落としやすいので注意することなどです。バッテリー持続時間の長いものを選んで、外でなるべく外さなくて済むようにするという方法もあります。
 また難聴などイヤホンによる健康被害も報告されていますが、大音量で長時間聴かないようにするのはもちろんのこと、日本国内のセーフリスニング(※7)をはじめ、各国で聴覚保護に対する啓蒙活動も行われていますので、ぜひ参考にしてみてください。
 音楽配信サービスも増え、音がますます身近になっています。自分に合ったワイヤレスイヤホンを選んでいつでもどこでも自由に音楽を楽しんでほしいですね。

※5 信号(Signal)と雑音(Noise)の比率のこと。数値が大きいほど雑音が少なく高品質の信号が得られる
※6 音楽データ送信の圧縮形式
※7 SAFE LISTENING http://safelistening.net/

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