JR東日本:and E

企業とスポーツの新しい関係<br>Case.1 東日本旅客鉄道株式会社<br>選手のときも、引退後のセカンドキャリアにおいても<br>変わらない「応援」でサポート

JR東日本野球部は千葉県柏市の練習場で、日々練習に励んでいる

企業とスポーツの新しい関係
Case.1 東日本旅客鉄道株式会社
選手のときも、引退後のセカンドキャリアにおいても
変わらない「応援」でサポート

JR東日本の企業スポーツの歴史は古く、国鉄、さらには明治時代にまでさかのぼる。なぜ、100年以上にわたり継続しているのか。その意図を本社担当者に聞くとともに、活動について野球部の濵岡武明監督、女子柔道部の福見友子監督に話を聞いた。

都市対抗野球に大応援団 社員同士の一体感を醸成

 JR東日本の企業スポーツチームは、野球部(東京支社)、東北野球部(仙台支社)、ランニングチーム(八王子支社)、秋田バスケットボール部(秋田支社)、女子柔道部(本社)の5つがある。

JR東日本のスポーツチーム

Featured_48_01.jpg

JR東日本東北野球部
1919年設立/拠点:宮城県(仙台支社)

Featured_48_02.jpg

JR東日本野球部
1920年設立/拠点:東京都(東京支社)

Featured_48_03.jpg

JR東日本秋田バスケットボール部(ペッカーズ)
1947年設立/拠点:秋田県(秋田支社)

Featured_48_04.jpg

JR東日本ランニングチーム
2003年設立/拠点:東京都(八王子支社)

Featured_48_05.jpg

JR東日本女子柔道部
2015年設立/拠点:東京都(本社)

 2つの野球部と秋田バスケットボール部は、国鉄時代から続いており、ランニングチームはJR発足後の2003年、女子柔道部は15年に設立された。野球部は千葉県柏市に専用グラウンドや室内練習場を持ち、女子柔道部は16年に完成した都内の専用柔道場を持つなど、会社の全面的なバックアップを受けて活動している。
 その成果もあり、野球部は社会人野球の最高峰・都市対抗野球大会で11年に優勝し、現在も10年以上にわたって本大会に出場し続けている。東北野球部も都市対抗野球の常連。どちらも、多くのプロ野球選手を輩出している。ランニングチームはニューイヤー駅伝(※)の常連チームで、秋田バスケットボール部も全国大会で優勝経験を持つ。女子柔道部も国内外の大会で優秀な成績を収め続けている。
 この5つのチーム以外にも、社員らが自主的に活動を行う会社認定のクラブが30あり(スポーツ以外も含む)、勤務上の措置や大会経費等の一部を助成している。
 なぜJR東日本は「企業スポーツ」に力を入れているのか。その理由について、所管するJR東日本人財戦略部健康経営・勤労ユニットの川上秀夫マネージャーは語る。
 「弊社では、企業スポーツは会社認定のクラブ活動も含め、明るい社風、企業づくりに有益だと考えています。グループ社員全体の一体感を醸成できるうえ、地元の方々との交流など、地域の活性化に寄与でき、企業のイメージアップにもつながっています」(川上マネージャー)
 社員の一体感の醸成に一役買っているのは、スポーツチームが出場する全国レベルの大会である。例えば、野球部が都市対抗野球に出場する際は、会場の東京ドームに多くのグループ社員が詰めかけ、熱心に応援をしている。応援団への参加を応募する社員も多い。
 野球部の濵岡武明監督は「都市対抗野球の決勝戦では、会場の半分が弊社グループの応援で埋め尽くされ、立ち見が出るほど。地響きがするような応援を受け、思わず身震いをしたことがあります。決勝でなくとも、他チームと比べて応援が多く、選手が所属する職場の皆さまが個人名の横断幕を用意してくださることもあり、非常に励みになっています」と話す。

Featured_48_06.jpg

濵岡 武明
JR東日本野球部 監督

 選手たちは社内のいずれかの部署に所属しており、顔見知りの選手が出場することも多い。そうした選手が活躍する姿に、社員たちは感動や勇気をもらう。また同じ会社の仲間と一丸となって応援することで、一体感を得る。
 「これだけの数のグループ社員と家族を集められるレクリエーションイベントは、ほかにありません。私たちは目に見える利益は生み出せませんが、そういうイベントを生み出しているというプライドを持って試合に臨もう、と選手たちには話しています」(濵岡監督)

Featured_48_07.jpg

真剣なまなざしで投球練習を見つめる濵岡監督。現役時代のポジションは捕手だった

 また、女子柔道部が出場する大会にも社員が応援に詰めかけている。「声を張り上げて応援してくださる姿が試合会場で見え、非常に大きな力になります。女子柔道部は女性の活躍の場をつくるために創部されたのですが、会社の皆さまが全面的にバックアップしてくださるので、安心して柔道に取り組むことができ、非常に感謝しています」と福見友子監督も語る。

Featured_48_08.jpg

福見 友子
JR東日本女子柔道部 監督

 コロナ禍においても、各チームが活動や試合の様子を動画でグループ内に公開したり、パブリックビューイングを実施したりして、一体感の醸成に努めている。

※正式名称は全日本実業団対抗駅伝競走大会。1957年から始まった大会で、東日本、中部、北陸、関西、中国、九州の各地区の予選を勝ち上がったチームで、実業団駅伝日本一を決定する

各チームがスポーツ教室で地域交流を図る

 各チームはそれぞれの地域において、教室等を開催し、地域の方々との交流を深めている。例えば、ランニングチームは地域のジョギング教室でランニング指導をし、秋田バスケットボール部は地域の子どもたち向けにバスケットボールクリニックを開催。女子柔道部も、毎年東日本エリアの各県で子どもを対象とした柔道教室を開催している。
 「会社の事業の中で、柔道が少しでもお役に立てることがあれば、積極的に関わっていきたいと考えています」(福見監督)

Featured_48_09.jpg

新幹線のイラストなどが刺しゅうされた女子柔道部のワッペンは、毎回試合開催地に縁のあるものを着用。現地の子どもたちが喜んでくれるからだ

 野球部も、地域の小中高生への野球教室を行っている。
 「ほかにも、こちらから地域の方々にあいさつしたり、雪かきを手伝ったり、と日常的に交流しています。次第に、地域の方々からもあいさつを受けるようになり、グラウンドに応援に来ていただけるようにもなりました。地域におけるスポーツの裾野を広げていくことも、私たちの重要な役割だと考えています」(濵岡監督)

引退後を見据えてさまざまな業務を経験させる

 企業スポーツの問題点としてよく語られるのは、現役を引退した選手のキャリアプランがおざなりになることだ。
 その点、JR東日本は引退後のキャリアもきめ細かくサポートしている。
 引退後も社業で働き続けることを前提として採用しており、選手としての実績・力量だけでなく、社員として引退後も活躍できる人材かどうかという観点からも選考しているという。
 引退後にすぐに社業で活躍できるよう、現役中からさまざまな業務を経験させるべく、どのチームの社員も午前中は自身の所属部署で勤務する。
 「野球部は全員、東京支社のいずれかの部署に配属されていますので、自身の部署の仕事に関心を持ち、積極的に仕事をしなさい、と指導しています」(濵岡監督)
 さらに、選手引退時にはスムーズに社業に就けるよう、改めて東京支社の営業部で2カ月間研修をした後、各駅に配属されるという。
 結果、引退後も活躍し、駅長など会社の中枢を担う人材を多く輩出している。駅、乗務員、企画部門等で活躍しており、ほかの社員と同様、意欲や能力に応じたキャリアを歩んでいる。濵岡監督も野球部で長年プレーした後、社業に就き、渋谷駅や秋葉原駅の勤務を経て、新橋駅の副駅長を務めた。
 「会社としてバックアップする姿勢がある上、野球部のOB社員がさまざまな部署にいて力になってもらえたので、スムーズに社業に就くことができました。非常に感謝していますし、私自身も先輩たち同様、選手たちと会社との橋渡し役を務めたいと考えています」(濵岡監督)
 濵岡監督は関係部署に依頼し、野球部の選手を対象とした社業に関する勉強会を開催している。その他、濵岡監督、福見監督を含めた5つのスポーツチームの監督は定期的に情報交換会も行っている。目的は、部員たちが社業にスムーズに就けるようにするためだ。
 こうしたバックアップ体制があるからこそ、選手たちは安心してスポーツに、そして仕事に取り組むことができる。
 「今後も企業スポーツの活動を通じて、選手たちが引退後も広いフィールドの中で会社を支える人材として活躍してくれることを期待し、バックアップを継続していきます」と川上マネージャーは語る。

Series & Columns連載・コラム

  • スペシャルeight=
  • JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!
  • SDGs×JR東日本グループSDGs×JR東日本グループ
    • 働く 集う 和む 空間の可能性働く 集う 和む 空間の可能性
    • カルチャーコラムカルチャーコラム
    • 地域発!世界を支える ものづくり地域発!世界を支える ものづくり
    • 東北に生きる東北に生きる
    • 働く 集う 和む 空間の可能性働く 集う 和む 空間の可能性
    • カルチャーコラムカルチャーコラム
    • 地域発!世界を支える ものづくり地域発!世界を支える ものづくり
    • 東北に生きる東北に生きる