JR東日本:and E

サステナブルな輸送システムへの変革<br>鉄道の自動運転がもたらすもの④

山手線の自動運転試験(運転台)

サステナブルな輸送システムへの変革
鉄道の自動運転がもたらすもの④

鉄道における自動運転の導入は、安全を担保しつつ、従来人が担ってきた部分を機械やシステムに転換することで、人口減少時代においても、鉄道をサステナブルなものにする手段の一つである。それは輸送システムの変革であり、輸送安定性の向上および、お客さまの需要やニーズに応じた柔軟な運行の実現をも意味する。山手線の営業時間帯初の自動運転導入試験や、一部路線で既に始まっている運転士のみのワンマン運転など、変革のスピードは徐々に加速している。

営業時間帯初の自動運転導入に向けた試験

 2022年2月に延べ5日間、山手線E235系の自動運転導入に向けた試験が行われた。目的は、JR東日本グループの経営ビジョン「変革2027」に掲げるドライバレス運転の実現に向け、ATO(自動列車運転装置)の開発を進めるため。ATOの試験自体は、18年度から山手線終電後に行われていたが、今回は初めて、営業列車も走る日中の時間帯に実施された。
 これまでの試験では、18年度に加速、定速走行、減速、定位置への停車など運転機能の試験、19年度に乗り心地向上や駅間停車防止に関する車両制御試験、20年度には先行列車を模擬の地上装置に設定して制御するなど、将来の運行管理との連携を意識した試験を繰り返してきた。
 それらの成果をもって、今回は前後に列車が走行している実際の環境で、加速・惰行・減速などの自動運転に必要な運転機能、乗り心地、さらには省エネ性能の検証をテーマとして、試験が行われた。

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2月25日に行われた自動運転試験の報道公開後に、報道関係者を前に取材を受ける市川東太郎代表取締役副社長

自動運転の実現にはベテラン運転士の知見が必要

 試験には開発に携わる技術者だけでなく、現役の山手線ベテラン運転士の存在が不可欠だった。お客さまの乗り心地に気を配りつつ、普段どのように加速・惰行・減速を行い、定時運行を守っているのかなど、彼らの細かなアドバイスのもと、走行する列車の速度変化や駅間走行時間などを示すランカーブが設定された。
 その際、駅間の所要時間を変えずに最高速度を抑え、運転エネルギーを削減する省エネ運転も考慮。当然、そこにも現役運転士の知見が不可欠だった。試験では、実際の走行と比較する形で、ランカーブをリアルタイムでモニターに表示。JR東日本の関係者以外にも、各メーカーの技術者がデータ収集のために立ち会った。
 今後は、今回の試験結果を分析して、次のテーマを設定する。それを繰り返し、さらに技術イノベーションに取り組み、将来のドライバレス運転の実現を目指していく。

ワンマン運転への業務変革と社員の意識変化

 JR東日本では人口減少時代においても鉄道をサステナブルなものにしていくために、自動運転の実現に向けた取り組みのみならず、ワンマン運転拡大などの業務変革も図っている。例えば、八戸線では既に実施していたワンマン運転を21年3月ダイヤ改正から拡大した。それに伴い車掌業務が縮小、これまで車掌が担っていた車掌業務や無人駅での集札・改札業務を運転士が担うことになった。
 この大きな業務変革を実現すべく、八戸線を担当する八戸運輸区では必要な教育を行うことを目的に、「車掌業務教育PT」を立ち上げて取り組んだ。山二陽介主任は、当時八戸運輸区でこの車掌業務教育に携わった一人だ。

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山二 陽介
盛岡支社 一ノ関運輸区主任

 「管理者が中心となり教育計画を作成し、私を含めた5名のPTメンバーが実務教育を進めました。」
 教育を進めるにあたり、教育の漏れや教育内容の不一致防止、進捗の引き継ぎ方法などの課題も見えてきた。それらの課題に向き合い、教育を進めながらメンバーが解決策の検討、実施を繰り返すという苦労を経て、車掌業務教育を達成した。
 「教える側、教わる側となった八戸運輸区の乗務員全員が協力し、お互いにやるべき事を積極的に担ったことが、短期間で成果を挙げられた要因」と山二主任は語る。
 取材当時、山二主任は運転士として必要な資格である動力車操縦者運転免許取得に向けた講習中だった。そこで、車掌業務の教育という役割を経験した上で、現在、運転士を目指すことについて聞いてみた。
 「当時のPTメンバーは、経験した苦労や達成感を胸に、企画業務、指令業務に進んだり、私のように運転士を目指したりと、それぞれの道で活躍しています。これからは、一人一役にとらわれず、その時々で自分がやるべき事、やってみたい事を模索して実践していく時代だと思います。私も今は運転士を目指していますが、運転業務だけでなく、さまざまな業務を経験しレベルアップしていきたいです。」
 新しいJR東日本グループへの変革に向けて、社員の働き方の意識も変わりつつある。

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