東京の大動脈である山手線は、世界的にもユニークな地上を走る環状線です。
　私たちは、この山手線を起点に、心豊かなライフスタイルを提案する『東京感動線』の創造に取り組んでいます。具体的には、駅の個性化やアーバンファーミング（※1）、コト体験の提供、日常とつながるアートの提案など、"東京の、ちょっとだけ未来の景色。"に向けた取り組みを行っています。

※1 都市の遊休地やビルの屋上、家庭菜園などを活用して、農的な活動を行うこと。脱炭素社会に向けた社会課題の解決策の一つとして、注目されている

まちの個性を引き出し、つながりから気づく新たな魅力

　特徴的な取り組みの一つとして、山手線の駅に「交流拠点」の開設をしています。 「交流拠点」とは、まちの個性を活かし、人と人とのつながりを創り出す施設です。2021年3月には、新大久保駅直上に「Kimchi(キムチ), Durian(ドリアン), Cardamom(カルダモン),,,」（略称K,D,C,,,）という、"食"をテーマとした「交流拠点」を開設しました。ここに来れば、多種多様な「フードプレナー（食のプロプレーヤー）」に出会うことができ、食に関するあらゆる情報にアクセスできます。そして、食を通じた新たな世界へのチャレンジを支援するプラットフォームとなり、あらゆる食のコラボレーションなども生まれています。ただ美味しいものを提供するだけでなく、新しいビジネスモデルやソリューションの試行の場など、さまざまな食ビジネスの未来が創り出される機会を創出しています。
　その他、食を通して文化や歴史、難しく考えてしまいがちな社会問題などをテーマとしたイベントを実施しています。食を通すと難しいテーマも身近に感じ、考えるきっかけが生まれやすくなります。さらに、同施設には実際に自分の店舗を出店できるシェアダイニングというスペースがあります。期間ごとに入れ替わる店舗では、生産者応援やエシカル（※2）、フードロス削減など、いろいろな想いを持った方々が出店してくださっています。

※2 「倫理的」という意味の形容詞。経済活動における環境保全や社会貢献という意味合いで使われる

新大久保K,D,C,,,とコラボ商品

　世界中の食文化が集まり、自由気ままに個性を発揮する新大久保というまちとつながった"食"の交流拠点は、多様な文化がイキイキと混じり合う場となっています。
　また、西日暮里駅に開設した交流拠点「エキラボniri（ニリ）」は、"暮らしと学びを近づける、駅で。"をコンセプトに、地域に根差した新しい形の学びを提供する場としてスタートしました。この場所では毎月さまざまなワークショップが開催されており、地元の企業や住民の方が講師となっています。地域の方同士の交流はもちろんのこと、乗り換えでご利用される方にもこの空間を体験していただき、それぞれの心豊かな暮らしを実践する一助となる文化交流拠点を目指しています。

エキラボniriでのワークショップの様子

知られていない想いを多くの方にお届け

　最後に、山手線全駅および沿線施設で展開中の季刊誌「東京感動線マガジン」では、沿線の店舗や施設を、そこに関わる人の想いにスポットを当てて紹介しています。
　その中で、SDGsなど持続可能な社会の実現に向け、社会課題の解決に取り組んでいる方々を数多く取り上げています。日々商品やサービスを利用しているだけでは気づきにくい、取り組みに携わる方々の想いを、『東京感動線』の創造を通じてより多くの方に届けていきたいと思います。
　今後もヒトとまち、ヒトとヒトなどのつながりを創出し、連携を深めるとともに、心豊かなライフスタイルの提案を進めていくことで、SDGs達成の一翼を担っていきます。

［報告者］
齊藤 千明／新藤 友理
JR東日本 東京支社
事業部 企画・地域共創課
山手線プロジェクト