JR東日本:and E

キャッシュレスのメリットは?<br>─千葉県の中学校で金融教育出張授業を実施

千葉市立稲毛高等学校附属中学校で行われた出張授業の様子

キャッシュレスのメリットは?
─千葉県の中学校で金融教育出張授業を実施

JR東日本はソニーと共同で、2021年11月17日に千葉市立稲毛高等学校附属中学校において、キャッシュレスに関する出張授業を実施した。その授業の様子をレポートする。

金融教育の一環として正しいキャッシュレスの知識を

 「キャッシュレス最高!」そう言い切る生徒に周囲は笑う。千葉市立稲毛高等学校附属中学校で行われたキャッシュレスに関する出張授業での1コマだ。
 行われた授業のタイトルは「キャッシュレスってなんだろう?〜電子マネーから学ぶ、キャッシュレスと経済のしくみ」。この日講師を務めたのは、ソニー株式会社FeliCa事業部の高橋純一氏、JR東日本MaaS・Suica推進本部の春原あきほ副課長と山本史子さん。進行は企業と連携した授業づくりを専門とする、NPO法人企業教育研究会の関谷紳吾氏が行った。

Featured_41_01.jpg

JR東日本MaaS・Suica推進本部の春原あきほ副課長(右)とNPO法人企業教育研究会の関谷紳吾氏(左)

 授業の目的は、キャッシュレス化の進行で多様化した購入・支払方法の特徴を生徒たちに理解してもらうことにある。従来は現金と各種カードぐらいを意識すればよかったが、現在はさまざまな種類の電子マネーやQRコードなど、新たな決済手段が普及。経済産業省によると2016年に20%だったキャッシュレス決済の比率は、21年には29.7%にまで拡大しているという。
 その動きはめまぐるしく、大人でもそれぞれの特性を正確に説明するのは難しい。そこで金融教育の一環として正しいキャッシュレスの知識を子どもたちに持ってもらおうと、非接触ICカード技術FeliCa(フェリカ)(※1)を提供するソニーが、JR東日本など電子マネーサービスを運営する6社(※2)に声を掛け、中学生向け教育プログラムを企画。その4例目となるのが、この日の授業であった。

※1 FeliCaは、ソニーグループ株式会社またはその関連会社の登録商標または商標です。
※2 イオン株式会社、株式会社NTTドコモ、株式会社ジェーシービー、株式会社セブン・カードサービス、東日本旅客鉄道株式会社、楽天Edy株式会社

Featured_41_02.jpg

ソニー株式会社FeliCa事業部の高橋純一氏

透明のICカードでFeliCaのしくみを解説

 授業を受けたのは、同校2年生の78名。一方的にならないようワークショップも交え、2部形式で授業を構成。「モノを買ったりサービスを受けたりする時、どのような方法でお金を支払いますか」の問いから第1部が始まった。
 現金、クレジットカード、図書カード、Amazonギフト......。生徒からは、さまざまな手段があげられ、その中にはFeliCa技術を使ったSuicaもあった。それを受け、それぞれの特徴を説明していく。特にFeliCaについては、中の構造が分かる透明のICカードを配布。高橋さんからは、しくみとして中学2年の理科で習う電磁誘導が使われていることなども解説された。

Featured_41_03_re.jpg

中の構造が分かる透明のICカード

 その上で、キャッシュレス決済が「お金に関する記録」をやりとりしていることを明らかにし、消費者側のメリット、店舗などのサービス提供者側のメリット、その双方を提示。生徒たちは一様にキャッシュレスの利便性や価値を理解した様子であった。

キャッシュレスを自分事と考え、理解を深める

 授業後半の第2部では、キャッシュレスを活用するとどのような良い点があるのか、消費者と店舗の両方の立場になって、生徒自らが考えてみるといった課題が出された。
 消費者・店舗には、「トレーニング好きのサラリーマン」「海外旅行に憧れる女子大生」「大型スーパー」「ゲームセンター」などの設定が与えられ、生徒たちはその設定に基づいて、考えを巡らした。

Featured_41_04.jpg

後半の課題説明を行うJR東日本MaaS・Suica推進本部の山本史子さん

 生徒たちの回答は、実際に自分事として考え、キャッシュレスの意味を深く考えたものであった。その一部を見てみると、

消費者側
・財布が軽くなる
・現金と違い、紛失しても補償される
・お金の管理が楽になり、履歴を振り返れば節約につながる etc.

店舗側
・レジ締めが楽になり、残業がなくなる
・ミスがなくなる
・混雑の緩和
・感染症対策
・ポイントと絡めることにより他店と差別化できる etc.

 といったもの。こうしたことから、「キャッシュレス最高!」という言葉につながったわけだ。
 とはいえ、キャッシュレスは万能ではない。最後にキャッシュレスで気をつけるべきことについて、講師より解説。その他最新の事例も紹介して授業は終了した。

Featured_41_05.jpg

ワークショップではキャッシュレスを利用する人物のペルソナを設定、それをもとに生徒はそのメリットを考察した

金融教育の必要性が高まる中で

 今回の出張授業は、総合的な学習の時間を使って行われた。
 「本来、職業体験を予定していたが、今般のコロナ禍により難しくなり、そんな中に話をいただきました」と話すのは、同校の吉田朋世先生。
 「本校の生徒の多くが遠くから通学しているので、Suicaには馴染みがあります。また、ソニーさんも、ゲーム機で親しみ深い会社です。だから生徒達もイメージしやすく、有益な授業をしていただけたと思います」(吉田先生)
 2021年度から改定された中学校学習指導要領では、金融リテラシーを高める内容が盛り込まれ、技術・家庭科の分野では「計画的な金銭管理に関する内容」が新設されている。その入り口として、今回の授業は効果的だったようだ。

Featured_41_06.jpg

千葉市立稲毛高等学校附属中学校の吉田朋世先生

 一方、授業を終えたJR東日本の春原副課長にも話を聞いてみた。
 「中学生は、通学等で行動範囲が広がる他、お小遣いの額が増えたり、外出先で自ら支払う機会が増えたりする時期です。それだけに、決済手段の多様化についてのリテラシーを身に着けるのに適した年代です。そのための1つのきっかけになればよいと思います」
 出張授業は、他の電子マネー事業者5社と持ち回りで行われるが、今後も積極的に関わっていく予定だという。金融教育の必要性が高まる中、こうした授業は子どもたちがお金について考えるよい機会になるものといえよう。

Featured_41_07.jpg

春原 あきほ
JR東日本 MaaS・Suica推進本部 決済事業部門
電子マネー戦略グループ 副課長

Series & Columns連載・コラム

  • スペシャルeight=
  • JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!JR東日本TOPICS 行ってみた! 聞いてみた!
  • SDGs×JR東日本グループSDGs×JR東日本グループ
    • 働く 集う 和む 空間の可能性働く 集う 和む 空間の可能性
    • カルチャーコラムカルチャーコラム
    • 地域発!世界を支える ものづくり地域発!世界を支える ものづくり
    • 東北に生きる東北に生きる
    • 働く 集う 和む 空間の可能性働く 集う 和む 空間の可能性
    • カルチャーコラムカルチャーコラム
    • 地域発!世界を支える ものづくり地域発!世界を支える ものづくり
    • 東北に生きる東北に生きる