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新幹線のすごさは「線路設備」にあり?<br> 日本の新幹線は、なぜ、すごいのか(前編)

新幹線のすごさは「線路設備」にあり?
日本の新幹線は、なぜ、すごいのか(前編)

現在、新幹線の最高速度は「はやぶさ」「こまち」の320km/h。この速度は世界最高クラスであり、さらに日本の新幹線の安全性は、世界随一のものとして知られている。新幹線が語られる際、車体に使われている技術に注目されがちだが、一方で、線路など、見えにくい部分での技術開発も行われている。なぜ、日本の新幹線はすごいのか、新幹線を支える技術や保守管理の取り組みを紹介する。

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奥村 誠 おくむら・まこと
東北大学災害科学国際研究所 教授
京都大学大学院修士課程修了後、京都大学助手、広島大学助教授を経て現職。ボストン大学客員研究員、JICAブラジリア大学技術協力プロジェクトリーダーを兼務した。災害の直接的な影響と回復プロセスの把握方法、都市計画的な災害への備え、避難計画、被災地の支援方法をテーマに、最適化計算、シミュレーション、統計分析を駆使して研究を展開。国土交通省東北地方整備局事業監視委員会、仙台市都市計画審議会、仙台市総合計画審議会の各会長などを歴任。

社会を変えた新幹線 その未来を考える

 「日本は新幹線があることを前提に、社会が成り立っている」と語る東北大学の奥村誠教授。その奥村教授に、日本の新幹線のすごさ、そしてさらなる進歩を遂げるために必要なことを伺った。
 1964年に世界初の高速鉄道として誕生した新幹線。その後、多くの国々で高速鉄道が生まれましたが、新幹線ほど利便性の高いものはありません。
 新幹線が圧倒的に優れている点は、第一に「運行本数の多さ」です。1時間に東北新幹線は4〜6本、北陸新幹線も2〜4本が運行していますが、他国でここまで多く走っている高速鉄道はありません。ヨーロッパでは、6両程度の車両が1時間に1本ぐらい運行しているというのが一般的です。
 もう1つは「時間の正確さ」です。新幹線は1分たりとも遅れずに到着するのが当たり前であり、5〜10分の遅延でも「遅れた」と感じますが、他国の高速鉄道では数十分遅れるのは日常茶飯事です。
 この2つの強みによって、新幹線は日本の社会を大きく変えました。新幹線があることを前提に社会が成り立っているといっても過言ではありません。

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東京新幹線車両センターに並ぶ新幹線車両。(左奥からE6系、E7系、E2系)

 旅行にしても出張にしても、日帰りや1泊2日で多くのことができるようになりました。「午前中に仙台で仕事をしてから移動して、午後3時からは東京で会議」といった時間の感覚は、新幹線なしにはあり得ません。同じ高速で移動できる手段として飛行機とよく比べられますが、日本国内で同じ目的地に移動する場合、到着時間の正確さで新幹線に軍配が上がりますし、国内の空港の多くは街の中心から離れており、新幹線の方が早く到着して便利なことが多いです。営業時間が6〜24時と長いことも、新幹線の優位性を高めています。

新幹線の本質は「線路設備」にある

 なぜ新幹線が「運行本数の多さ」と「時間の正確さ」を実現できているのか。その理由は車両よりも「線路設備」にあります。
 時速300kmを超える高速走行を実現させるためには、常に線路に障害物がない状態を保つことが必要です。なぜなら、急停車ができないので、何かの拍子で障害物が入ってくると、大事故につながる可能性があります。時速300kmで走ると、停車するのに4km程はかかるといわれており、そこまで先を目視するのは不可能です。
 新幹線は、その「常に障害物がない線路」を見事につくり上げました。人も動物も入り込めないように高架橋を造り、信号を張り巡らせることで、極端な話、運転士が前を見なくても走行できる状況をつくり出した。新幹線の本質はここにあります。

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東北新幹線は1時間に4~6本、北陸新幹線は2~4本と、他国の高速鉄道には類を見ない運行本数の多さを誇る

 ただ、その安全性を脅かすのが「自然災害」です。耐震補強工事をしたり、地震発生時の転倒防止装置を付けたり、と多様な策を講じていますが、100パーセント盤石な状態にするのは簡単ではありません。先頭車両にセンサーを付けて線路の被災状況をいち早く検知するなど、新たな技術開発は継続的に必要でしょう。
 また、「時間通りに到着する」新幹線の信頼性を守るためには、自然災害で運行がストップしたときの代替輸送体制をより進化させることも必要です。例えば、オプション料金を払うと、飛行機やバスの振替輸送がすぐに受けられる。そんなサービスがあれば、忙しいビジネスパーソンは利用するかもしれません。

新幹線のソリューションを世界に輸出する

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、新幹線も乗客が減っています。アフターコロナになっても、人口減による影響は避けることができないでしょう。しかし、新幹線は、そうした不安要素を吹き飛ばすポテンシャルをまだまだ秘めていると私は考えています。使い方を工夫すれば、顧客サービスを向上させられ、さらに売上を伸ばせるでしょう。
 その方法の一つは「スペースを高く売ること」です。例えば、1人でも隣接した指定席も買えるようにする。新型コロナの流行で、他人と距離を取りたい人は少なくありません。PC作業に集中したい人、ゆったりと移動したい人を含め、「追加料金を払ってもいいから、周囲の座席も確保したい」というお客さまはいるはずです。

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 もう一つは空席がある、すなわち「空気を運んでいる区間・季節・時間帯を有効活用すること」です。すでに生鮮品を運んだり、停車中の車両をオフィススペースとして貸したりすることなどが行われていますが、他にもできることはあります。その筆頭は、新幹線の貨物利用でしょう。貨物専用車両を連結すれば、トラックで運ぶより、環境に優しい貨物輸送システムができあがります。
 荷重の耐久性の問題もあるので、新幹線の全区間を貨物に使うのは無理だとしても、一部区間だけ新幹線で運び、あとは他の輸送手段で運べば十分活用できるはずです。仮に東北新幹線なら、仙台港から宮城県利府町の新幹線車両基地まで貨物新幹線用の引き込み線を造れば、貨物を仙台港まで船で持ってきて、そこから新幹線で運べるかもしれません。
 また、空気を運ぶぐらいなら、新幹線が好きな子どもを無料招待すればいい。将来の需要への投資になり、新幹線や日本の素晴らしさを学ぶ機会になるはずです。
 このように多様な活用方法を編み出せば、世界のさまざまな交通輸送問題を解決するソリューションとセットで、新幹線のシステムを輸出できるようになるかもしれません。日本の新幹線は、それだけの期待ができる高速輸送機関なのです。


東京新幹線車両センター

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東京新幹線車両センターに並ぶ、E5系(左)、E7系(右)新幹線

東京駅・上野駅発着の車両を整備

 1982年に運転を開始した東北・上越新幹線は、当初、大宮駅が起点とされていた。だが、85年には上野〜大宮間が開通し、大宮駅に換わって上野駅発着の運転に変更。これに合わせて誕生したのが、東京都北区にある東京新幹線車両センターだ。
 同センターは、田端駅に隣接する田端操車場の貨車操車場跡地に設置されたが、当初は上野第一運転所という名称で、87年に上野新幹線第一運転所に改称。現在の東京新幹線車両センターという名称になったのは2004年のことであった。設置の目的は、91年に延伸した東京駅と上野駅に発着する新幹線のブレーキ装置やパンタグラフなど、主要な機器類を分解せずに在姿状態で検査をする仕業検査、万が一不具合があった場合の臨時修繕、清掃作業、夜間に車両を停めておく留置など。ちなみに、東京新幹線車両センターには、留置線が18線、仕業検査線3線が備えられている。

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東京新幹線車両センターでは、東京駅・上野駅に発着する新幹線の整備を担当する

新幹線統括本部が管理する8カ所の車両センター

 JR東日本の保有する新幹線の車両センターは8カ所。最大規模の新幹線総合車両センター(宮城県)を筆頭に、残り7カ所は、東京ほか、小山(栃木県)、盛岡(岩手県、青森県)、秋田(秋田県)、山形(山形県)、新潟(新潟県)、長野(長野県)といったそれぞれの地名を冠に持つ新幹線車両センターとなっている。
 通常、新幹線車両センターでは日常の車両検査が行われるが、宮城の新幹線総合車両センターでは、日常的な検査だけでなく、各車両センターに所属する車両も含む、主要機器の解体検査を担当。さらに、改造工事や新たに製造された車両の搬入、廃車による解体など、新幹線車両に関する総合的な業務が行われている。
 これらを統括するのはJR東日本新幹線統括本部。新幹線を一元的、専門的に統括する。同本部のもと、各センターは安全・安心な新幹線の運行に日夜励んでいる。

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