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地域発!世界を支えるものづくり<br>印傳屋上原勇七が伝える<br>「印伝」とは

2020年秋に発表したシリーズ「SARAMAS」のバッグ(左上)、海外向けブランド「INDEN EST.1582」のバッグ、下左から「庵(いほり)」シリーズの束入れ、伝統紋様の束入れと免許証入れ

地域発!世界を支えるものづくり
印傳屋上原勇七が伝える
「印伝」とは

山梨県甲府市に大きな本社工場を構える印傳屋上原勇七。創業1582年の老舗として「印伝」の独自技法・素材を代々継承しながら、新たな商品づくり、そして海外進出に挑んでいる。同社の歴史、また海外展開への思いについて、上原重樹社長にお話を伺った。

【Company Profile】
株式会社 印傳屋上原勇七
代表取締役社長:上原重樹
本社:山梨県甲府市川田町アリア 201
設立:1953年(創業1582年)
従業員数:78名
事業内容:印伝(革製品)製造・販売

戦国~江戸の武具・生活道具にルーツを持つ甲州印伝

 印傳屋上原勇七の創業は1582年、戦国時代は本能寺の変あたりにまで遡る。印傳(印伝)とは鹿革を使った革工芸の総称。藁の煙で着色する「燻(ふす)べ」、革の上に顔料を載せ鮮やかな色彩を生む「更紗(さらさ)」といった技法が武具の装飾に使われた。江戸時代、遠祖・上原勇七は新たに鹿革へ"漆"を載せる独自技法・漆付けを創案。江戸庶民の生活道具に用いられるとともに印伝の美的価値と使用価値を高めた。ここからこの地に伝わる「甲州印伝」の歴史が始まった。
 現社長・上原重樹氏は印傳屋上原勇七14代目にあたる。

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「海外だけでなく、国内市場でも新しいファン層を獲得していきたい」と語る上原重樹社長

 「私が子どもの頃は自宅のすぐ近くに工場があり、父親の働く姿を目の前で見ていました。自分が14代目になることに迷いはなし。小学校の『将来の夢』にもそう書いてあるくらいでしたから」
 法人設立は重樹氏の祖父の代だった。しかし設立間もなく祖父が急逝。後を継いだ父を、重樹氏は大学生活を送りながらも手伝ったという。
 「先代は印伝を産業として発展させるため、本来『家長への口伝のみ』であった当社技法を職人たちへ公開しました。家業から企業へ。それは大きな決断だったと思います」

甲州印伝の噂は遠く離れた海外まで拡がる

 その頃から商品ラインナップにも変化が生まれる。それまでは合切袋(がっさいぶくろ)・信玄袋といった古き良き代物、あるいは和柄の革小物などが主力商品だったが「洋服で着飾る現代人にはマッチしない」と、1983年に新ブランドとして「Carray(キャレー)」を開発。以降も毎年新商品を発表し、特に女性向けブランドバッグ・革小物の品揃えを充実させた。

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本社の1階は展示場となっており、同社の技術によって生み出された製品が数多く飾られている

 「開発にあたっては今も製造・営業・外部デザイナーらで構成した社長直轄プロジェクトチームを立ち上げ、アイデア発案から予算・納期管理までを行っています」
 国内に拡がるファンの裾野は海外まで届いた。
 「およそ30年前、ティファニーが印伝の素材に興味を持ったことをきっかけに、コラボ商品を企画・開発しました。初めての海外コラボには試行錯誤を繰り返しましたが、さすが老舗ブランド、職人の思いを非常に大切にしてくれた。共同制作にはさまざまな学びがありました」
 海外ブランドとのコラボ企画は後を絶たず、2015年にはグッチとの共同制作が実現。17年には英国王室御用達・アスプレイのクリエーション・コラボレーション・パートナーに選定されている。

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最も代表的な技法である「漆付け」。染め上げた鹿革に型を置き、1枚1枚丁寧に漆を刷り込んでいく

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「模様が彫られた型のすべてが当社の大切な宝物です」と語る上原伊三男専務取締役

「我が社は素材屋にあらず」

 それらの経験を機に、11年には米国ファッション市場に向けた新ブランド「INDEN NEW YORK」を立ち上げた。16年からは「INDEN EST.1582」に改め、ヨーロッパのファッション市場開拓にもチャレンジしている。
 「海外のお客さまが好む柄のパターン等も新たに開発し、完成後は海外まで足を運んでバイヤーと商談しています」
 海外で「印伝」と言っても当然ながら誰も知らず。まったくゼロからのチャレンジに「まだまだ始まったばかり」だと重樹氏。しかし国内直営4店舗(甲府・青山・心斎橋・名古屋御園)で商品を直販したところ、想定以上に売れ行きがよかったそうだ。コロナ禍によるサプライチェーンの混乱が巻き起こる最中、今後は国内外の新市場開拓・新規ファン獲得が大きな目標となる。

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©C.S/JR東日本/D
「Suicaのペンギン」模様も人気製品の1つ。それぞれ表情の違うペンギンが掘られた型を使い、丁寧に刷り込んでいく

 海外コラボ・海外進出にあたり、重樹氏にはこだわりがあった。
 「相手がどんなに有名なブランドでも『印伝の技法が施された素材だけがほしい』という注文にはお応えしません。もちろん当社は技法・素材に自信を持っていますが、あくまで『最終商品をお納めするところまで』を行う企業。ただの下請けではない、それが我々のポリシーです」

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