JR東日本:and E

びゅうトラベルサービス<br> 旅行会社から観光流動創造会社へ

びゅうトラベルサービス
旅行会社から観光流動創造会社へ

JR東日本グループの旅行会社として、「びゅうパッケージツアー」や「ダイナミックレールパック」などの旅行商品を手がけてきたびゅうトラベルサービスは、現在、事業の転換期にあるという。同社は今、どう生まれ変わろうとしているのか。今後の展望を伺った。

JR東日本エリアに観光の流動を創っていく

 株式会社びゅうトラベルサービスは、JR東日本グループにおける唯一の旅行会社だ。旅程に往復の列車を組み込んだ旅行商品「びゅうパッケージツアー」や、列車と宿を自由に組み合わせる価格変動型旅行商品「ダイナミックレールパック」の企画・運営・販売、「大人の休日倶楽部」の会員を対象としたサービスや添乗員同行の国内旅行商品の企画などを手がけている。
 1992年の設立以来、順調に発展を遂げてきた同社だが、「現在大きな転換期にある」と森崎鉄郎代表取締役社長は語る。旅行商品の企画や販売を主目的とする従来の旅行会社の範疇にとどまらず、JR東日本エリアに、観光流動のうねりを創っていくことを第一の事業目的とした、観光流動創造会社へと生まれ変わろうとしているというのだ。

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森崎 鉄郎
代表取締役社長

 今地域にあるものを紹介するだけでなく、顧客がリアルに移動したいと思える目的を創るために、まずは、スタッフが地域に根差し、土地の人々と共に魅力あるものを育てていかなければならない。これにより、地域の人々からの信頼を得て、さらに活性化にも貢献することができる。そして、地域が活性化すれば、その土地の素晴らしい素材を見に行こう、食べに行こうという気運が生まれる...。同社が目指す観光流動創造会社とは、鉄道を利用した旅を勧めるだけでなく、まさに旅の目的を地域と共に創り出していく会社を意図している。

「びゅうプラザ」から「駅たびコンシェルジュ」へ

 では具体的に同社は、どう変わろうとしているのだろうか。
 同社ではこれまで、主要駅の構内に開設している「びゅうプラザ」において、パンフレットを使った旅行商品の営業・販売を事業の柱の1つとしてきた。だが2021年度末でパンフレットを原則廃止。個人型旅行商品はすべてウェブ販売に移行することになる。

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地域のお客さま、旅行者どちらでも入りやすい雰囲気の「駅たびコンシェルジュ川崎」

 同社の「ダイナミックレールパック」もそうだが、近年は交通手段や宿の繁閑に応じて価格が変動し、ウェブから購入するタイプの旅行商品が、顧客からの支持を集めている。旅行会社もウェブの普及によって、こうした商品の販売が主流となりつつある。
 「パンフレットによる旅行商品の場合、一度販売を開始すると、最初に決めた価格を臨機応変に変更するのは不可能です。時代にそぐわないものになってきたというのが、パンフレットの廃止を決めた一番の理由です」(森崎社長)
 同社ではパンフレットだけでなく、「びゅうプラザ」についても、21年度末までに全店舗を閉鎖。代わりにJR東日本が新たな顧客接点の機能を持つ店舗として開業する「駅たびコンシェルジュ」の運営を担っていく。21年3月には、その先陣を切って川崎駅と秋田駅に「駅たびコンシェルジュ」が開業した。

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「駅たびコンシェルジュ」の店内は山形県天童市の木製家具メーカー「天童木工」製のテーブル等を使用し、お客さまがゆっくりと相談ができる雰囲気に統一されている

 「駅たびコンシェルジュ」は、訪日外国人も含めた旅行客からの旅に関するさまざまな相談に、じっくりと時間をかけて丁寧に対応する場となる。また個人型旅行商品がウェブ販売に完全移行することに伴う対応として、ウェブに不慣れなシニア層に対して、スマートフォン等での旅行商品の購入方法の案内も実施。なお、大人の休日倶楽部パス、訪日外国人旅行者向けフリーパス、団体旅行商品等については、引き続き店頭で販売を行うことになる。また、講師とともに楽しむ各種セミナーや、講座を行う場所の役割も果たす。
 同社が「駅たびコンシェルジュ」で目指しているのは、旅行客から「あの店舗に相談に行ったら、ガイドブックやインターネットで調べてもわからなかった情報を教えてくれた。おかげで旅が楽しくなった」と言ってもらえるような場になることだ。

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「駅たびコンシェルジュ」で行われた、大人の休日倶楽部会員向けのオンライン講座

 「『びゅうプラザ』では、旅行商品を売ることが主業務でしたが、『駅たびコンシェルジュ』では、JR東日本のファンになってもらえるよう、お客さまと信頼関係を築き、『旅行をするなら、列車を使って東日本エリアを訪れたい』と思っていただけるお客さまを一人でも多く増やしていくことが、観光流動創造会社として今後、私たちが取り組んでいこうとしていることです。旅行業というビジネスの中に縛られず、観光流動促進に絡む事業なら何でもやっていきたいですね」(森崎社長)

それぞれが自分の持ち場のスペシャリストになる

 同社において「駅たびコンシェルジュ」の立ち上げ準備や、既に開業している店舗の運営支援を担っているのは業務管理本部である。同本部顧客接点プロジェクトの星野節子次長は、「びゅうプラザ」から「駅たびコンシェルジュ」へと業態を転換するにあたって、もっとも力を注いだのは「スタッフの教育だ」と話す。

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業務管理本部 顧客接点プロジェクトの星野節子次長

 「コンシェルジュとなると、これまで以上にお客さまへのホスピタリティが求められます。そこでスタッフには、ホテルのコンシェルジュの方が講師を務める研修会を受講してもらうなどして、意識改革を図りました」(星野次長)
 また、コンシェルジュであるためには、各店舗のスタッフが、その地域の文化や歴史、観光スポット、最新情報などに精通していることが条件となる。そこでスタッフには、その土地をよく知るために、地域を歩いて回るなどして、常に情報をアップデートしていくことを推奨しているという。

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秋田の社員が地域を歩いて情報をまとめた街歩きマップ

 その上で星野次長は、スタッフに対して「自分の持ち場のスペシャリストになってください」といつも話している。それぞれがスペシャリストであれば、例えば川崎駅の「駅たびコンシェルジュ」を訪れた顧客が、「秋田の穴場スポットを知りたい」と要望したときには、秋田のスタッフとオンラインで結べば、その場で地元発の旬の情報を提供するといったことが可能になる。こうして各事業所のスペシャリストをネットワーク化することで、より質の高いサービスを各店舗が一体となって提供したいと考えている。

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他の店舗とオンラインでつないで、旬の情報をおすすめする

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コンシェルジュスタッフが旅のお手伝いを行う

旅行者と地域をつなぎ関係人口を増やしたい

 JR東日本エリアに観光の流動を創造していくためには、より魅力的な旅の提案を顧客に対して行っていくことも重要になる。
 同社では20年10月、旅行に対するニーズや環境の変化をいち早く捉えつつ、新たな事業を創造することを目的に、新規事業プロジェクトを立ち上げた。
 営業企画本部営業戦略部新規事業プロジェクトの松嶋秀弥担当部長は、「今後は、デジタルデータを活用し、お客さまに対して個別に情報を発信していくOne to Oneマーケティングの充実を図っていきたいし、JR東日本グループならではの鉄道素材を活かした旅行商品の企画も積極的に考えていきたい。また、旅行者と地域とのつながりを深め、いずれは移住に結びつくような取り組みもできたらいいなと思っています」と語る。頭の中に、いくつものアイデアがあるようだ。

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営業企画本部営業戦略部新規事業プロジェクトの松嶋秀弥担当部長

 鉄道素材を活かした旅行商品としては、JR東日本の車両センター見学や、アニメのキャラクターをラッピングした列車を旅行商品化して販売すると、予約が殺到するほどの人気になるという。そのほか、感染リスクが少なく安心して旅行ができるような「露天風呂付客室」「お部屋食」「少人数催行ツアー」も売れ筋商品になるという。

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普段は見ることができない車両センターの見学ツアーは人気

 また旅行者と地域とのつながりという点では、旅行者がその土地に何度も足を運びたくなるような仕掛けが必要となる。
 「農業体験ツアーは、新規事業を社内公募した際に、数多くアイデアが出た注目したい企画の1つです。例えば、ワイナリーでワイン用のブドウを植えたり収穫する体験をしたら、ワインになるまでの状態が気になり、何度も訪れようとなりますよね。オンラインでは、地域の旬な情報を提供する地域連携ウェブサイト「*and trip.」を立ち上げました。地域の方と旅行客の交流が深まるきっかけを作ることで、関係人口の増加が期待できます」(松嶋担当部長)

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地域連携ウェブサイト「*and trip.」では地元発の旬の情報を掲載

 旅行業界は今、コロナ禍の中で大変な苦境の最中にある。だが森崎社長の意識は前を向いている。
 「新型コロナウイルス感染症が落ち着いたときに何がしたいかと聞かれた際に、多くの方が旅をあげます。旅を通じてお客さまの人生を豊かにし、地域を元気にする。そのために私たちは挑戦を続けていきます」と力強く結んだ。

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