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地域発!世界を支えるものづくり<br>南部鉄器を進化させたOIGENブランド

本社敷地内にはオイゲンファクトリーショップがあり、同社の製品を購入することができる。鉄鋳物フライパンなどが人気だという

地域発!世界を支えるものづくり
南部鉄器を進化させたOIGENブランド

南部鉄器は岩手県盛岡市・奥州市で作られる鉄鋳物の総称だ。発祥は17世紀はじめ。奥州市に本社を置く及源鋳造もそんな南部鉄器老舗メーカーの一つである。同社が手掛ける海外市場開拓の戦略について、及川久仁子代表取締役にお話を伺った。

【Company Profile】
及源鋳造株式会社
代表取締役:及川久仁子
本社:岩手県奥州市水沢羽田町字堀ノ内 45
設立:1947年(創業1852年)
従業員数:68名
事業内容:南部鉄器の製造・販売

新市場開拓はOIGENなりのやり方で

 及川源十郎鋳造所として創業したのは、江戸末期・嘉永年間の1852年。戦中、職人が戦争に駆り出されて生産はストップしたが、戦後間もなく鍋・釜の製造が復活、1947年に及源鋳造として法人発足した。高度経済成長期には造型機を導入し、手作業のみの製造から、動力を使った製造へと移行。60年代には商社を通じて欧米への輸出も開始した。
 しかし、80年代後半から90年代にかけてバブル崩壊を端緒に売り上げが低迷。代表取締役を務める及川久仁子氏が東京の短期大学を卒業後、他の企業勤めを経て同社に入社したのはそんな不況に陥る"前夜"だった。

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「『OIGEN』ブランドをさらに強固にするため、現在は商社を経由せず直接輸出することにしています」と語る及川久仁子代表取締役

 「私は84年に入社しましたが、そのときから当社のマーケティングやブランディングに課題を感じていました。展示会では、白い布の掛かったひな壇に、ジャンルの異なる鉄器が全て一緒くたに展示されていたりする(笑)。古い伝統や形式にこだわっていたら新しい市場を開拓できない。問屋に言われたもののみを製造するだけではなく、OIGENなりのやり方・見せ方で進めなければ、と上司に伝えたこともありました」

現代のライフスタイルを意識 生活サイズの鉄瓶を企画

 商品企画に携わっていた久仁子氏の尽力でリリースされた製品の一つが、15年以上も前に生まれた「源十郎シリーズ」の鉄瓶だ。当時の鉄瓶市場は中国の台頭により模倣品・値崩れ品で溢れていたが、久仁子氏は1升(約1・8リットル)サイズが常識とされた鉄瓶市場に風穴を開けた。現代のライフスタイルに適した1リットルサイズの鉄瓶を企画。商品製造に協力した地元職人から反発はあったが、新商品は好評を博した。
 「源十郎シリーズに限りませんが、われわれが新商品開発に踏み切れたのは、先代社長である父の代にデザイナー(金属造形家)を起用して、南部鉄器の世界にデザインを持ち込んでいたことが大きかった。デザインの力が売り上げに直結するケースは、その後もたびたびありました」

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世界的なプロダクトデザイナーであるジャスパー・モリソン氏とのコラボで誕生したコレクション「Palma」のティーポットとスタンド

 もう一つ、久仁子氏を支えたのが、現在は専務を務める夫の存在だ。90年代半ばにエンジニア出身の夫・秀春氏が同社へ入社したことで、生産技術が向上したという。
 「上等鍋──今は海外市場を意識し『ネイキッドフィニッシュ』と呼称していますが、その特許技術はまさに、彼のおかげで誕生しています」

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OIGENの製品は工程の精度が高く、「美しい鋳肌」が特長だ

南部鉄器を進化させたネイキッドフィニッシュ

 同社の鉄器は砂練り・造型(砂型作り)・注湯(砂型へ鉄を流し込む)・砂落とし(砂型を壊す)・表面加工・バリ取りによって製造される。鉄瓶製造の最終工程は釜焼きで、高温で焼き、漆を塗ることでさびにくくする。一方、鉄鍋は釜焼きをせず、鋳造後、化学塗料やほうろうなどでコーティングすることでさびにくくしている。

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左:「砂練り」→砂型を作る「造型」 中央:砂型へ鉄を流し込む「注湯」 右:砂型を壊す「砂落とし」→表面加工→バリ取りを経て、釜焼きへ

 「釜焼きの手法を鉄鍋にも使えないか」と考えたのが秀春氏だった。苦心の末に生まれた「ネイキッドフィニッシュ」という技法は、鋳造した鉄を高温で焼くことで、たわしでこすっても剥がれない酸化皮膜を形成。南部鉄器でノンケミカルな鉄鍋の製造を可能とした。
 技術が完成した2003年当時、すでに海外見本市への出展や直接輸出を行っていたが、ネイキッドフィニッシュの鉄鍋は、食品接触物質に敏感な海外の人々に、高い評価と共に受け入れられた。
 久仁子氏は最後にこう話す。
 「海外市場はもちろんですが、国内市場向けにも近々『MUGU』という新シリーズをリリースする予定です。コンセプトは『遊べる鉄器』。7月頃には発表できると思います。今後も"OIGEN"でなければ作れない製品を作っていきたいですね」

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工場は見学可能(要予約)で、南部鉄器の製造工程が分かる展示コーナーもある

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