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「『新しい東北』復興ビジネスコンテスト2020」に見る東北との歩み<br>「食」から始める地方創生

JR女川駅からのシーパルピア女川の目抜き通り

「『新しい東北』復興ビジネスコンテスト2020」に見る東北との歩み
「食」から始める地方創生

復興庁は、震災復興を契機に、原状復帰にとどまらず、震災前から被災地が抱えてきた課題を克服し、地方創生のモデルとなる「新しい東北」を創造する取り組みを進めている。「『新しい東北』復興ビジネスコンテスト2020」もその一つで、2021年2月22日にその表彰式が行われた。

 復興庁では2014年度より、「新しい東北」復興ビジネスコンテストを開催してきた。
 これは東日本大震災の被災地にて、地域産業復興や地域振興事業を展開中または計画中の企業・団体・個人から、事業や事業計画を募集。ビジネスモデルが優れており、被災地の課題解決や地域経済・産業の成長につながる事業を表彰し「新しい東北」を創り上げていこうというものだ。このコンテストにはJR東日本も含め多くの企業・団体が協賛・協力しており、独自に企業賞を設定している。応募総数は、20年度までの7年間で1367件にのぼり、受賞団体・個人は企業賞も含めて118件に達した。
 復興庁がこのコンテストを実施してきたのは、被災地の復興は、官の力だけでなく、地域産業に関わる多くの方々の努力や創意工夫なくしては困難であり、そうした方々を支援していきたいという考えによるものだ。復興庁復興特区班の佐藤篤志主査は、さらに次のように語る。
 「被災地は、今の日本が抱えている人口減少や高齢化、産業の空洞化といった課題が、他の地域より進行しています。だからこそ、全国の地域の課題解決につながるビジネスモデルが被災地から生まれてくる可能性があり、そういう意味でも、コンテストを実施してきた意義は大きいと考えています」

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佐藤 篤志氏
復興庁 復興特区班 主査

応募された方全員に何かを持ち帰ってほしい

 「新しい東北」復興ビジネスコンテストでは、1次と2次の審査を経て、大賞や優秀賞、各企業賞が選定される。佐藤氏は「応募者全員が『次につながる何か』を得られるコンテストにしたいと考えながら、これまで運営をしてきました」と語る。
 例えば1次審査は、応募書類をもとに事務局が行うが、審査結果の通知時には、単に通過か落選かというだけではなく、今後のヒントにしてもらうために、そのビジネスモデルの長所や改善点を記したコメントも一緒に伝えている。
 2次審査では、通過者は「新しい東北」官民連携推進協議会会員や、さまざまな分野の専門家で構成される審査員の前でプレゼンテーションを実施。その上で、審査員によるアドバイスや感想を直接その場で聞くことができる。
 また2次審査の終了後には、応募者と審査員が一堂に会する交流会を設定。応募者同士の歓談の中から、「こんな事業を一緒にできたらいいですね」と話が弾み、新たなビジネスモデルやコラボレーションが生まれる場になっている。

応募者の被災地に対する熱い思いが伝わってくる

 20年度のコンテストは、新型コロナウイルス感染症流行の影響で、2次審査も表彰式も一部オンラインでの実施となった。今回大賞を受賞したのは、宮城県女川町でスーパーを営む株式会社御前屋。同社は震災での津波によって店舗が流失した中で、移動販売や弁当の配達を開始。さらには介護施設も手掛けるなど、地域の高齢化に伴う買い物難民の増加や介護施設の不足などの課題解決に、地元に根差したスーパーとして、包括的に取り組もうとする姿が高く評価され、今回の受賞となった。なお流失した店舗は、20年に復旧した。

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 「応募されてきた方々の事業内容を見ていると、被災地を何とかしたいという熱い思いが伝わってきます。それに対して審査員の方々も、応募者の思いを真摯に受け止めて、熱心にアドバイスを送っています。実は私自身、被災地の福島の出身ということもあり、そうした場面を見ていると、胸を揺さぶられることが多々あります」(佐藤主査)
 14年度から始まった「新しい東北」復興ビジネスコンテストは、震災10年を迎えた20年度でいったん終了することになった。ただし、被災地の復興支援自体が終わるわけではない。「この7年間で、コンテストに参加された事業者や、審査員を務めた専門家、協賛していただいた企業の間で、さまざまなつながりが生まれました。このつながりをより強めていくための取り組みを、新たに何かできないかと考えています」(佐藤主査)


「新しい東北」復興ビジネスコンテスト2020 大賞

創業102年の老舗スーパーが女川の暮らしの"困った"を解決します!
~老舗が紡ぐ女川町生活インフラ構築事業~

株式会社 御前屋(おんまえや)

宮城県牡鹿群女川町黄金1番地1

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[大賞受賞事業概要]
・震災を契機に発生した人口減少高齢化、それに伴う福祉施設の不足、買い物環境の不足、働く環境の未成熟の課題にフォーカス
・介護施設、スーパー、移動販売車、地域外への物販を組み合わせた事業展開に加え、NPOと連携した移住促進雇用拡大の取り組みを展開

[受賞のポイント]
食品スーパーが津波により流失した後、移動販売で町民の食生活を支え、加えて上記事業の他、宿泊や船舶仕込(漁に出る船員の要望に合わせて、さまざまな必需品を用意するサービス)といった新たな事業にも前向きに取り組む。そんな同社の事業は、人口減少地域における新しいビジネスモデルとして注目されている。

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