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JRとまとランドいわきファームの目指す未来<br>「食」から始める地方創生(case2)

JRとまとランドいわきファームの目指す未来
「食」から始める地方創生(case2)

福島県いわき市にある株式会社JRとまとランドいわきファームは、JR東日本と地元農家の提携によって設立された会社だ。同社は太陽光利用型ハウスを活用し、名前のとおりトマトを生産。一般市場、ならびにJR東日本グループ企業などに販売している。

 株式会社JRとまとランドいわきファーム(福島県いわき市)は、JR東日本と地元農家、有限会社とまとランドいわきとの提携により、2014年に設立された会社だ。
 福島県の沿岸部にあたる浜通りは、東日本大震災と原発事故により、地域全体が疲弊していた。そこでJR東日本では、農業を通じた地域の復興支援に寄与するため、パートナーとしての農業事業者を探していた。
 一方、とまとランドいわきは、これまでも太陽光利用型ハウスでトマトを生産してきた実績があり、高い生産技術を有していた。同社ではハウスのさらなる規模の拡大と、6次産業化への取り組みを検討しており、JR東日本ではその実現に向けて支援すべく、提携を決めたという。

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ハウスでは「フラガール」など、10種類を超えるトマト(大玉・中玉・ミニ)が栽培されている

 こうして設立されたJRとまとランドいわきファームでは、新たに太陽光利用型ハウスを建設し、16年から生産を開始。現在は大玉トマトを中心に中玉トマトやミニトマトも栽培し、年間の生産量は490tに及ぶ。生産されたトマトは、市場を通してスーパーへ、商社を通してJR東日本グループの飲食事業会社やホテルなどに販売されている。
 ハウスの隣には、とまとランドいわきが設立した6次産業化施設「ワンダーファーム」が併設されており、トマトやトマト加工品などを販売する直売所やレストラン、加工工場が展開されている。

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ワンダーファームのエリア内にはレストラン「CROSS WONDER DINING(クロスワンダーダイニング)」、直売所「森のマルシェ」、自社加工工場「森のあぐり工房」がある他、トマトを栽培するトマトハウスが隣接している

 「トマトの鮮度は、へたの周りの匂いで判断します。首都圏の大手スーパーのバイヤーからは、『青臭くて良い匂いだ』と高評価を得ているほか、お客さまからは、『甘みと酸味のバランスがちょうどよい』といったお声をいただきます」こう語るのは、同社の濱野清和取締役だ。
 ハウス内の湿度や二酸化炭素の濃度、肥料や灌水の量などの管理は、コンピュータ制御によって行っている。ただし光だけは太陽光を利用しているため、夏季の高温には対処が難しいのが課題だ。「高温だと、トマトも変色するなど質が悪くなり、市場に出せないものが増えていきます。暑さに強い品種を導入することで、1年を通した市場への安定供給を目指しているところです」

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「森のマルシェ」では、トマトハウスで栽培したトマトや、そのトマトを使ったオリジナル商品を販売している

いわきのトマトのブランド力を強化したい

 同社の使命の一つに、トマトの生産を通じて、地域の活性化に貢献することがある。
 同社が雇用している30名の従業員のうち正社員は2名だが、2人とも農業に興味を抱き、他業界から転職してきた地元出身の若者だ。農業の担い手の高齢化が進む中で、次代の地域農業生産の核となる若手を育成していきたいという思いが同社にはある。
 また20年秋には、若い世代に向け、収穫・葉かき・選果作業など、ハウス内で4日間働いてもらうことを条件に、旅費や宿泊費、食費を無料にするプログラムをトライアルで実施した。
 「当社で働くことをきっかけに、この地域のことを多くの方に知ってほしいという思いから実施しました。今後も震災の記憶を風化させないために、例えば当社での就労と、双葉町にオープンした東日本大震災・原子力災害伝承館への訪問などをセットにしたパッケージプランを作るなど、ブラッシュアップを図っていきたいですね」

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濱野 清和
株式会社JRとまとランドいわきファーム 取締役

 そして濱野取締役が何より実現したいと考えているのが、自社のみならず、いわきのトマトのブランドを確立することだ。
 年間を通して日照時間が長いいわき市は、トマトの栽培に適した土地柄だ。そのため市周辺には、太陽光利用型ハウスを建設して、トマト生産を手掛けている事業者が、同社の他に5社ある。だが、「サンシャイントマト」と名付けて売り込みを図っているものの、消費者からはまだ十分に認知されていない状況にある。
 「事業者間で品種を統一し、『新鮮採れたてトマト』や『完熟トマト』として売り出していけないかと考えています。またJR東日本グループと連携して、いわきのトマトの魅力を発信していくことも、私たちの大切な役割です」
 多くの人から、「トマトといえばいわき市のサンシャイントマトだね」と言われるようになることが、濱野取締役の目標だ。


衛生的に優れた温室で栽培 洗わず、そのまま食べられる

 株式会社JRとまとランドいわきファームのトマトは、太陽光利用型のハウスで栽培されている。このタイプのハウスは全天候型で、温度や湿度などの管理がコンピューターで制御される。もっとも、気候は日々変化するため、スタッフが温室内の状況を確認。その状況によって、設定を変えている。さらに、毎年の気候のデータを蓄積して活用することで、より効率的かつおいしいトマトの栽培につながっていくという。

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フッ素樹脂フィルムで覆われた温室は太陽光が拡散され、柔らかな光が偏りなく全体を照らしている

 温室の素材はフッ素樹脂フィルムを使用。太陽光を浴びると光が拡散することから、温室内は満遍なく照らされる。苗床は土ではなく、吸水性に優れた鉱物繊維・岩綿培地を使うロックウール栽培で、水や肥料は自動で供給される。

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ロックウールに植えられ、コンピューター制御により、水と肥料が自動的に供給される(左)
温室内の情報はコンピューターで制御され、常に栽培に最適な環境が保たれている(右)

 苗は毎年8月のお盆すぎごろに植え、約1カ月で最初の実がなる。それからさらに1カ月が過ぎると、規格に合ったおいしい実となり、出荷できるトマトになる。
 茎は上へ上へと伸びるため、天井から垂らしたひもで縛られる。伸びた部分にトマトが実り、収穫後にひもを下ろして茎の先端を低い位置に戻す。すると、また上に伸びていく。これを20〜25回繰り返し、10カ月で1本の茎から12〜15kgを収穫する。
 衛生的に管理された温室で栽培されたトマトは、洗わずにそのまま食べられる。収穫はスタッフが一つひとつ手摘みで行い、さらに熟練のスタッフが選別した上で出荷される。

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毎年8月に植えられ、10月には規格に合ったおいしいトマトが収穫される

 なお、同社は2016年にJGAP(農産物)の認証を取得した。JGAPとは「日本の良い農業のやり方=Japan Good Agricultural Practice」の略。食品安全・労働安全・環境保全・人権福祉など、持続可能な農場経営への取り組みに関し、日本の標準的な農場にとって必要十分な内容を網羅した基準だ。農産物の安全性を高める科学的なアプローチであり、品質の証でもある。
 そんな同社のトマトは収穫体験ができる。隣接するワンダーファームで申し込み可能だ。
 高品質のトマトは、先進技術に支えられたハウスの中で生まれている。

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