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地域の恵みに込める「ストーリー」の重要性<br>「食」から始める地方創生

地域の恵みに込める「ストーリー」の重要性
「食」から始める地方創生

東京一極集中を是正し、人口減少に歯止めをかけて日本全体の活力を上げることを目的とした「地方創生」。2014年、第2次安倍改造内閣発足時に発表され、一連の政策がスタート。各地でさまざまな取り組みがなされている。こうした中から、人の営みの根本ともいえる「食」に目を向け、その取り組みについての現状やヒント、JR東日本の挑戦を紹介する。

ひとは「食」を求めて産地に足を運ぶ

 「スーパー公務員」として、数々の地域創生事業に携わってきた木村俊昭さん。現在、東京農業大学教授、日本地域創生学会会長を務める木村さんは、地域活性化を図る上で、「食」は重要な要素だという。では、どのように「食」を活かせるのか。その方法を伺った。

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木村 俊昭 きむら・としあき
東京農業大学 農生命科学研究所教授
北海道生まれ。84年小樽市入庁。2006年から内閣官房・内閣府、09年から農林水産省にて、地域ビジネスの創出や6次産業化などを手掛けてきた。現在は東京農業大学教授、内閣官房シティマネージャー、総務省地域力創造アドバイザー、(一社)日本事業構想研究所代表理事、日本地域創生学会会長、実践総合農学会理事なども務めている。

 私は年間100カ所前後の地域現場を訪ね歩いています。そこでよく耳にするのは、「うちのまちには特徴がない」「地域興しといっても、売りにできるものは何もない」といった言葉です。しかし「ない」はずがありません。気付いていないだけなのです。
 一例を挙げると、近年、東北の豪雪地帯や北海道などで、地吹雪体験ツアーが盛んに催されています。今は新型コロナ禍の影響で迎え入れることができなくなっていますが、このツアーは台湾などの雪の降らない地域からの訪日外国旅行者に大人気となっています。
 私は北海道出身ですのでよく分かりますが、地吹雪なんて、地元の人にとっては、耐え忍ぶものでしかありませんでした。でも、あるとき「これは見方を変えれば、強みにできるぞ」と気付いたのです。地元にいると、まったく魅力を感じられないモノやコトが、外部の人からすれば非常に魅力的だったりするのです。
 では、どうすれば、自分たちのまちの強みや魅力を見つけ出すことができるのでしょうか。

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 私は、自分たちのまちの「食」や「産業」「文化」「自然」などについて五感分析と、「過去からあって、今もあるもの」「過去にはあったが、今はないもの」「過去にはなかったが、今はあるもの」「過去からなくて、今もないもの」という4つの観点から洗い出し一覧表を作成することをお勧めしています。
 「食」でいえば、例えば信州の蕎麦のように、地域で昔から作られていて、今も食べられているものもあれば、江戸時代は作られていたが、今は作られていないものもあるでしょう。あるいは北海道の米のように、昔は育てられていなかったが、品種改良が進んだことや地球温暖化の影響などで、今は育てられているものもあります。また「過去も今も作られていないが、この地域の気候や環境を考えれば、きっとこれが作れる」というものも必ずあります。
 このように4つの観点で洗い出すことで、自分たちのまちの強みや魅力になるものを掘り起こし、研きをかけていくのです。

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特産品の魅力づくりには「ストーリー」がカギとなる!

 私は地域の活性化を図る上で、「食」は重要な役割を担っていると考えています。食べることは人間にとって、大きな喜びであるからです。人は「食」を求めて、わざわざ産地に足を運んだり、産地から取り寄せたりします。
 私も「食」による地域の魅力づくりに、これまでいくつも携わってきました。その一つに奈良県御所市での取り組みがあります。
 御所市は大和芋の産地で、最盛期には300名ほどの芋農家がいましたが、売り上げや利益の確保に苦労し、今では激減しています。生産者の芋作りに対するこだわりは非常に強く、規格外の形の芋は全部捨ててしまいます。
 しかし、これは生産性の面からも、SDGsの観点から考えても実にもったいない。そこで規格外の芋を使って、芋焼酎を創ることにしました。そして完成した芋焼酎を手に料亭を回ったところ、キレがあって、すっきりとした味わいであることが高く評価され、いくつものお店で置いてもらえることになりました。

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御所市農産物生産促進事業で誕生した御所芋焼酎「みかけによらず」(右)と御所市産の柿、柿の葉だけを使用したシロップ「柿蜜 KAKI MITSU」(左)。共に原材料の歴史を活かし、ブランド化を図っている。なお、「みかけによらず」はインターネットで購入可能だ(写真提供:御所市)

 さらに御所市産の御所柿・富有柿を使って柿シロップを創ったところ、これもヒット商品に。生産者の皆さんの所得の向上に、大きく貢献することができました。
 こうした新しい特産品開発は、御所市に限らず全国各地で行われていますが、成功していない地域があります。私は、その違いを「その産品にストーリー(脚本)があるか」だと考えています。
 例えば、御所芋は奈良時代に天皇に献上され、また御所柿は江戸時代に、日本初の完全甘柿として知名度が高まったという歴史を持ちます。これらの歴史を魅力的なストーリーとして打ち出すと、人は興味を抱き手に取ってくれますし、おいしければリピーターになってくれるでしょう。ですが、どんなにおいしくても、ストーリーをうまく伝えられなければ、他の商品の中に埋没してしまいます。
 地元にあるものの中から魅力的なものを掘り起こし、研き上げていく過程では、そこにストーリー(脚本)をどう伝えられるか、「ひと・こと・もの」がカギになるのです。

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