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日本線路技術<br>卓越した技術で安全・安定した鉄道づくりに貢献

日本線路技術
卓越した技術で安全・安定した鉄道づくりに貢献

日本線路技術は、線路に関わる調査や測定、分析、コンサルティングなどを手掛ける会社だ。JR東日本グループの一員として、JR東日本管内での活動はもとより、保線の面から国内外の鉄道事業者を支える存在になることを目指している。事業に対する思いと、事業内容を紹介する。

日本の線路技術における第一人者を目指す

 日本線路技術は、線路の保守に特化した事業を行う会社として、1979年に設立され、2017年からJR東日本グループの一員となった。
 設立以来、同社が事業の柱としてきたのは、線路の検測事業とエンジニアリング事業だ。
 検測事業とは、軌道検測車やレール探傷車などを用いて、軌道(線路)の変位やレールの損傷などを検測する業務のこと。一方、エンジニアリング事業では、線路の安全性などについての調査・測定や新線の開設、既設線を改良する際の軌道設計や軌道部材設計、さらには、線路の保守方法に関するコンサルティング業務まで手掛けている。
 さらに同社は、JR東日本グループに仲間入りした頃から、従来の事業に加えて、モニタリング事業と教育事業についても、本格化させている。
 今号の第1特集でも紹介したように、JR東日本では、通常運行している列車の床下に線路設備モニタリング装置を搭載し、線路の状態に関するデータを継続的に取得できる技術を開発し、18年より本格導入を始めている。モニタリング事業では、このモニタリング装置が測定したデータの処理や、データを基に線路状態の分析などを行った上で、JR東日本に情報を提供している。
 また教育事業は、各鉄道事業者の新入社員や技術者を対象に講師を派遣し、保線に関する理論や専門知識、施工技術に関する教育を行うというものだ。
 同社のように高度な技術を持ち、コンサルティングや教育事業まで展開している会社は、全国的に見ても極めて少ない。そのため堀山功代表取締役社長は、「当社はJR東日本保線部門のシンクタンクになると同時に、日本の線路技術における第一人者になることを目指しています。グループの一員として、JR東日本の列車の安全・安定輸送に貢献するとともに、国内外の鉄道事業者を支える存在でありたいと考えています」と語る。
 現状では、同社の売上の約8割が、JR東日本からの受注によるものではあるが、グループ外からの受注も増えており、さらなる受注拡大を目指している。

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堀山功 代表取締役社長

日本線路技術特有の検測機器で
鉄道事業者の線路メンテナンスに貢献

 例えば、長年同社の事業の柱であり続けてきた検測事業は、JR東日本のみならず、私鉄の線路メンテナンスにも貢献している。検測事業部検測戦略ユニットの酒美康之課長は語る。「当社特有の検測装置の一つに、牽引式軌道検測装置があります。これは、軌道検測車と同じように線路の検測ができるものですが、いざというときトラックなどで現地に運搬が可能なことが特長です」。実際に19年に発生し、各地に甚大な被害をもたらした台風19号に際して、JR吾妻線や、東北エリアの私鉄の線路検測作業を行い、復旧作業の一助となった。この装置は災害時のみならず、一部の鉄道事業者では定期的な検査にも活用されている。

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酒美康之 検測事業部 検測戦略ユニット 課長

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軌道検測車が、災害などにより運用が困難な場合の代替用として開発された、牽引式軌道検測装置

 また、レール内部を超音波で検査するレール探傷車という保守用車両のうち、軌陸式(道路はタイヤで、線路上は鉄道用の車輪で走行する車両)は、日本線路技術でしか所有していない日本でただ一つの車両だ。道路上を移動できるメリットを最大限に活かし、東北から四国エリアの鉄道事業者のレール探傷検査に貢献しており、酒美課長は、この車両の老朽取り換えに伴う新型車両導入の中心メンバーとして、設計製作に携わっている。「これまでの社内のノウハウを踏まえ、メーカーと打ち合わせながら、各種機器を統合して新たなものを造ることに、大きなやりがいを感じています」と酒美課長は語る。

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軌陸式レール探傷車後部の超音波探触子を点検中の酒美課長(右奥)

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軌陸式レール探傷車について、社内打合せを行っている酒美課長

モニタリング装置を全国の鉄道会社に広めたい

 同社にて、線路設備モニタリング装置に関わる事業を行っているのが、モニタリング事業部である。モニタリング装置から取得できる情報は、線路のゆがみなどの軌道変位に関する測定結果データと、締結装置などの軌道材料に関する画像データの二つがある。
 「このうち軌道変位に関するデータは、通常運行している列車に搭載されている装置による計測データが、随時伝送されてきます。例えば山手線であれば、装置を搭載した列車が1日当たり20周程度走行していますから、20周分のデータが取得できます。そのデータの中から、ノイズの除去等を行ったうえで、最も波形がクリアで良質なデータを選び出して、JR東日本に提供するということを行っています」と話すのは、同事業部モニタリング戦略ユニットの廣田誠副部長だ。

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廣田誠 モニタリング事業部 副部長

 一方、軌道材料に関する画像データについては、データが記録媒体に蓄積され、月1~2回事業部に送られてくる。これを同様にデータ処理を行ったうえで、JR東日本に提供している。
 廣田副部長は、「最近、モニタリング事業の未来を考えるようになった」と話す。
 「今後は、JR東日本以外の鉄道事業者様にも、モニタリングを広げていきたいと考えています。モニタリングを導入すると、データ処理のため、日本中の鉄道会社から、軌道や軌道材料に関するデータが、私たちのところに集まることになります。そうしたデータを基に、線路の軌道変位予測の精度向上など、さらに付加価値のあるサービスや提案が、各鉄道事業者様にできるようになればいいですね」

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モニタリングセンターでは、レールやレールを固定する締結装置などの様子を、軌道材料画面で確認する作業が日々行われている

新幹線の高速化試験で調査・測定に関わる

 国内外の鉄道事業者の安全・安定輸送の維持・向上に貢献するという面では、エンジニアリング事業部も大切な役割を果たしている。
 例えばJR東日本では現在、試験車両「ALFA-X」を用いて、新幹線の高速化に向けた試験が行われているが、その実現のためには同事業部の技術力が欠かせない。同事業部技術戦略ユニットの島津健副部長は語る。

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島津健 エンジニアリング事業部 副部長

 「新幹線を現在よりも速いスピードで走らせた際に、軌道や軌道材料に影響が及ぶことがないか、調査・測定を行っています。また乗り心地も大切ですから、高速化した際に、車内がどのように揺れるかについての動揺測定試験にも取り組んでいます」  同事業部では、長年培ってきた技術を活かして、台湾の鉄道会社へのコンサルティング業務や、中国の鉄道では軌道の敷設指導を行うなど、海外の鉄道事業者の支援にも精力的に取り組んでいる。

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ALFA-X車両内で行われている列車動揺測定試験

保線業務を支える教育事業

 同社の四つめの柱が、18年度から本格的に取り組みを開始した教育事業だ。教育事業部教育戦略ユニットの伊藤智部長は語る。
 「主な業務としては、JR東日本設備部から依頼を受け、各支社に講師を派遣して行う保線技術講座があります。また、グループ会社のJR東日本パーソネルサービスが主催している研修の中で、保線の専門知識に関わる講座も担当しています。さらには、中小の鉄道事業者様を対象にした研修も実施しています」

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伊藤智 教育事業部 部長

 この事業部の最大の特長は、講師陣が充実していることだ。中堅技術者や専門技術者を対象にした研修については、経験豊富な鉄道総合技術研究所やJR東日本のOBが、講師を務めている。一方、新入社員や若手技術者向けの研修では、主にJR東日本から出向してきた第一線で活躍する現役の技術者が、講師を務めている。
 「JR東日本から出向希望者を募り、将来保線業務の中核を担う若手や中堅のホープが来てくれます。彼らには、当社で講師を務めながら保線に関する知識を磨き、その経験を再び職場に戻ったときに、活かしてもらいたいと考えています。日本線路技術は、今後も保線に関する専門性を存分に発揮しながら、列車の安全・安定輸送を支える存在として、国内外の鉄道の持続的な発展、鉄道事業者とその先にいる地域の皆さまへ貢献していきます」(堀山社長)

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教育事業部による研修の様子

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