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東北に生きる。<br>北上高地に響く風土の声

「短角牛」とは、藩政時代に現在の岩手県北部~青森県東部で飼われていた日本古来の在来種・南部牛をルーツとする国産和牛。岩手の北上高地では、今でも「夏山冬里」と呼ばれる独自の飼育が行われている

東北に生きる。
北上高地に響く風土の声

土地に根づき、毎日を営む──。東北の文化を記憶する写真家、奥山淳志のフォトエッセー。

 空の下で草を食む短角牛の姿を見ていると、いつも、ある情景が浮かぶ。それは、この牛たちが三陸の海から重い塩俵を背に、山また山の塩の道を辿って、内陸の地を目指す遠き日の姿だ。
 時代は移り変わり、短角牛が塩を運ぶことはないが、その姿は今も北上高地にある。
 とくに春から秋にかけての放牧風景はこの牛たちの生きる姿を物語る。山の頂に開かれた牧野で子育てをし、自然交配して新たな生命を宿す。国内のほとんどの和牛が人工飼育と人工授精によって繁殖されている実情と比較すると、短角牛は生命の力強さに満ちている。
 夏が終わり、霜が降りだすと、里から人が牛を迎えるためにやってくる。山を降りた牛たちは、再びめぐり来る春を待って、人とともに冬を生きるのだという。



奥山淳志 おくやま・あつし
写真家
1972年大阪生まれ。出版社勤務後、98年に岩手県雫石町に移住。以降、写真家として活動を開始し、雑誌を中心に北東北の風土や文化を発表する。2015年の伊奈信男賞をはじめ、日本写真協会賞新人賞、写真の町東川賞特別作家賞などを受賞。主な著作に『庭とエスキース』(みすず書房)など。
https://atsushi-okuyama.com

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