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脳科学者 中野信子が伝授する「賢いキレ方」<br>社会人のための教養コラム

脳科学者 中野信子が伝授する「賢いキレ方」
社会人のための教養コラム

キレられっぱなしで反論しないとただの「都合のいい人」になってしまいますよ! と警鐘を鳴らすのは脳科学者の中野信子先生。『キレる!』がベストセラーとなっている中野先生に、「都合のいい人」を脱却する賢いキレ方について伺いました。

中野信子 なかの・のぶこ
脳科学者
1975年東京都生まれ。98年東京大学工学部応用化学科卒業。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。08年 フランス国立研究所にて博士研究員として勤務し、10年に帰国。現在は東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授を務める。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を行う。『キレる!』(小学館)をはじめ著書多数。

キレられない人は「都合のいい人」になる

 「上司に理不尽なキレ方をされたのに反論できなかった」
 「クライアントに無理難題を押し付けられ、結局言いなりになってしまった」
 腹が立っているのに、言い返せずに我慢してしまう。あなたにはこんな経験はないでしょうか。
 もしかしたら、あなたは人ともめ事など起こしたくない穏やかないい人なのかもしれません。でも「いい人」は一歩間違うと「都合のいい人」になってしまいます。
 「都合のいい人」は何をされようが、何を言われようがキレないので、お金や時間をひたすら搾取される「いいカモ」です。
 そもそもキレる行動につながる「怒り」の感情は、身を守るための自然な反応です。自分が理不尽な状況におかれていると認知すると、脳は"闘うホルモン"ノルアドレナリンやアドレナリンにより、戦闘モードに入ります。動物としては当然のこと。キレる自分を恥じる必要はありません。
 自分が不利益を被っていたり、搾取されていると感じ、怒りの感情が沸き上がったら、「キレる」という行動で自分の怒りを相手に示すべきなのです。

社会生活を円滑にする賢くキレるテクニック

 日本人は「キレ下手」です。これは、私たちが日本語をほぼ書かれた文字から学び、話し言葉を学習してこないからではないかと考えています。つまり言葉を使って「怒り」を表現することに慣れていないのです。それだけに社会生活を円滑にするためには、「キレるテクニック」を上手に身に付けることが重要になります。
 今までキレてこなかった人はキレることに関しては赤ちゃんレベルです。ですが大人ですから学習は速いですし、知性のベースもあるので、3年もあれば上手にキレられるようになります。
 例えば、大声で怒鳴ったり、支配的な態度をとるパワハラ上司や、失礼な質問をするセクハラ上司がいたとしましょう。そういう相手には最初に「ここから先は踏み込まないでもらいたい」とはっきり意思表示することが大事です。「こいつを支配するのは難しそうだ」と思わせればよいのです。

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鏡の前でロールプレイング

 キレるのが苦手な人はロールモデルを探すことをお勧めします。マツコ・デラックスさんや有吉弘行さん、高嶋ちさ子さんなどはとても上手にキレてらっしゃいますよね。共通しているのは、感情的にキレていないこと、笑いを交えていること、言いっ放しではなくフォローを入れていることでしょうか。フォローの手法は管理職の方が部下にキレるときの参考にもなります。どのような立場の人でも、自分に合ったお手本を見つけたら、鏡の前でロールプレイングしてみてください。これは自分の反省も込めてなのですが、強くキレると相手は確かに引きますが後に恨みを残します。柔らかく禍根を残さないキレ方を身に付けましょう。
 脳は何歳からでも育て直せます。「賢くキレるテクニック」がこれからの時代を生き抜く貴重なリソースになるはず。ぜひ習得してください。

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